(書 評)
三宅歳雄教話選集『地上の星たれ』


                     國學院大学兼任講師
永井美紀子

 この本は、1999年に逝去した三宅歳雄氏の4冊目の教話選集である。第4番目の刊行ではあるが、ここにはそれまでの3冊よりも初期の、昭和27年から同31年までの間の教話が収められている。しかしながら、説かれている内容には、時代を超えて訴えかけるものが多々あり、今日の多難な社会に生きる私たちにとって、大きな示唆を与え得るものである。

 三宅氏といえば、その個性的な信仰によって、自身の信ずる金光教の枠を超え、他宗教との対話や協力活動、平和活動に積極的に取り組んだことでよく知られている。この本のなかでも、彼は、戦後の混乱期において一方的な要求ばかりを求める人々によって生じる争いを戒め、お互いが己の要求を捨てて、相手の立場のために自分を捧げきり、尽くしきることが、平和な家庭や平和な社会実現への道であると論じている。

 彼はまた、そうした姿勢の追求が、宗教の成さねばならぬ世界でもあり、信仰者の使命でもあると説き、「でき難いから精魂込めてやり抜かしてもらうのだ」とさえ主張する。そして、このような態度は彼にとって、真の信仰者の目指すべき生活であると同時に、終戦直後の国際社会において、「独立」し始めた日本の進むべき道でもあると考えていたのである。

「思い上がった一人歩きでなしに」人の役に立つように世界に貢献していくことは「今後の日本のあり方、否、世界全体のあり方を、シャンとさせるものである」、という彼の訴えは、決して当時のことだけでなく、50年経た現在、様々な問題を抱えた国際社会における日本にも、あるいは他の国々にも該当する、時宜を得た警鐘として響き渡る。

 行き詰まっているという人々に厳しく神の前での改心を求め、あくまでも問題に真剣に取り組むようにと迫る彼の厳しい言葉は、今なお、鋭い切っ先を向けて迫ってくるものなのである。


(『週刊 仏教タイムス』2003年 1月 9・16日合併号より転載)

 


金光教泉尾教会
ご意見・ご感想をお聞かせ下さい。
E-Mail:izuo@relnet.co.jp