・・ 2016年 新春メッセージ ・・

『今、宗教者に求められるもの』(順不同 敬称略)

命をもっと大切に

融通念佛宗 管長
総本山大念佛寺 法主
倍巖良舜

命を軽視している事件が世界中で多く発生しています。シリアなどは政府、反政府、イスラム国、と三つ巴(どもえ)の戦争状態です。日本の近辺でも北朝鮮のような物騒な国があります。

命は何億年か前に地球という小さな星で誕生しました。多分海の中で無数の条件、つまり無数の縁(えん)によって誕生した不思議なものです。いくら科学が進んでも実験室で「命」をつくることはできないのです。

今、日本人の平均寿命は八十余年になっています。世界でもトップクラスです。しかし、人生の意義は時間の長さではなくその質にあります。命の不思議ということは神仏のご加護ということです。「命を大切にせよ」ということを強く訴(うった)えていかねばなりません。


■日本宗教を牽引し、世界平和を願う

金峯山修験本宗 管長
総本山金峯山寺 管領
五條良知

謹んで新春のお慶びを申し上げます。

近頃の信仰は、自分自身や身内へのお助けの現世利益をお願いすることのみに終始する方が多いようです。しかしながら、自身のみではなく他者を認めて、今の自分があることに感謝し、その他大勢の平安を祈ることが本来の信仰であり、信仰を保てる者の強みであると思います。

現在の世界を見ますに、今こそ他者の平安を祈り、感謝の念を常にもってきた日本の宗教がその力を発揮しなければならないときなのです。貴教会の教会長様、総長様には教信徒様と大神様とのおつなぎに邁進(まいしん)されながらも、日本宗教を牽引し、世界平和を願い世界の宗教者と対話を重ねてくださっておりますこと、ありがたいことと存じております。

今年は、貴教会様には、先代教会長様の十年祭とのこと。この機に、先人の積まれた徳を慕われ、更に深いお導きが得られる年となりますようご祈念申し上げます。


■礼に始まり、礼に終わる

立正佼成会 会長
WCRP日本委員会 会長
庭野日鑛

若い頃、少々剣道を習っていました。道場に出入りする時、稽古や試合をする時…まさに「礼に始まり、礼に終わる」が習慣づけられていました。

試合で一本を取られても、悔しさを言動に出したりしません。「参った」「参りました」と頭を垂れ、礼を尽くします。相手の強さ、偉大さに敬意を表するのです。

このことは、身近な人間関係においても大切なことです。私は、よく新婚の夫婦に「愛して礼を失わず」という言葉を贈ります。どんなに親密な間柄であっても、決して礼を失ってはならない。お互いに礼をするとは、自他を共に尊重することです。夫婦円満の秘訣といえるかもしれません。

現代人は、こうした日本の伝統的な精神を今一度かみしめ、実践し、大事にして伝えていきたいものです。民族間にしろ、国家間にしろ、調和の出発点は、そこにあるように思えます。


■生命の尊厳と宗教者の使命

日本聖公会 首座主教
植松 誠

新年おめでとうございます。

世界平和に向けての御教団の熱心なお働きに心より感謝し、深い敬意を表します。

昨年は戦後70周年の年でした。海外で出会う人々に、日本が戦後70年を迎えると申しますと、「戦後とはどの戦争からか」と聞かれたことが何度もあります。世界の多くの国、それも世界のリーダーとも言われる国々が、1945年のいわゆる第2次世界大戦終戦の後も、何らかの形で戦争に関わってきているからです。日本は戦後70年、戦争で1人も殺していないし、1人も殺されることがなかったということを話しますと、これらの人々は「信じられない」と言って驚きます。

日本の宗教者たちは、神仏から与えられた生命の尊厳を何よりも大事に、平和に向けた歩みを続けていかなくてはなりません。


天地のご恩に感謝を捧げ

大本 教主
出口 紅

明けましておめでとうございます。平成28年丙申(ひのえさる)の新春を、皆様とともに清々しく迎えさせていただきましたことを心より有り難く存じます。

さて私ども大本では、本年、出口なお開祖の生誕百八十年を迎えさせていただきます。天保7年の大飢饉の年に生まれました開祖は、自ら実践して火・水・土の大恩を諭(さと)し、神様から世界人類の困苦の姿を見せられて、「大難を小難に 小難を無難に」と一身を捧げ、祈り続けた生涯でございました。

今、世界はことごとく混乱を極めておりますが、私たち大本は開祖の姿に神習い、天地のご恩に感謝を捧げ、大難を小難、無難にと祈り続けるとともに、世界中の人群万類すべてが真に豊かで平和に暮らせる世の中になりますよう、皆様とともにたゆみない努力を重ねて参りたいと存じます。

金光教泉尾教会様の弥栄と皆様の益々のご健勝を心よりお祈り申し上げます。


■慎(つつ)ましくも心豊かな日々を送る

神道扶桑教 管長
宍野史生

新玉の年の始めをお祝い申し上げます。

昨年11月、富士山麓において世界連邦平和促進全国宗教者信仰者山梨大会を開催させていただき、その折には大変お力添えを頂き感謝しています。雄大奔放な「お山」を望み、あらためて不戦平和の誓いを新たにいたしました。

先の大戦で戦渦に斃(たお)れた多くの人々の命と戦後復興を力強く支えられた先人のお蔭のもと、今日の日本があります。

溢れるほどの物質に囲まれ、一見豊かな生活を謳歌している私達ですが…。片や一人ぼっちでの孤独死や若年層の貧困など、果たして本当に豊かな国家なのか疑問を感じます。「一人一人が慎ましくも心豊かな日々を送る」そんな将来を目指して精進を重ねて行きたいと思います。


■縦横の生活

松緑神道大和山 教主
田澤清喜

神さまと自分、先祖さまと自分、親と子のつながりを縦の軸として、人さまとのつながりを横の軸として、その交わっている1点がひとりひとりの存在です。縦と横は偶然交わっているのではなく、必然として交わるべきものであります。

そこには、私たち、それぞれの存在意義があります。その存在には、神の意志があり、親の願いがあり、多くの方々の喜びがあります。交わる1点にしっかりと輝けるそれぞれの生命があります。

神と人との結びつき、人と人との結びつきを信仰生活に構築していきたいと強く思うところです。

三宅龍雄先生十年祭にあたり、先生の後ろ姿や数多くのご教導から思惟するものです。


■寂光土めざして祈りと行動を

妙智會教団 法嗣
宮本惠司

「娑婆即寂光土」という言葉があります。日蓮大聖人は『一生成佛抄』という御遺文の中で「衆生の心けがるれば土もけがれ 心清ければ土も清しとて 浄土と云ひ穢土と云ふも土に二つの隔てなし」とお述べになられています。

これは衆生の心が清ければ、六道の衆生が住する迷いの世界(娑婆)は、即、佛の悟りの世界(寂光土)すなわち浄土世界になるとのご教示です。

私たちの憎しみや怒りは、やがて数えきれないほどの恐怖の連鎖を生み、地獄のような世界をつくりだします。しかし、柔和で慈悲の心は、幸福を生み、浄土世界を顕現します。

私たち宗教者は自らの信仰心を強めるとともに、現世界に潜む暗黒に寂光を濯(すす)いで行くことこそ肝心であると思います。

私も「祈りと行動」の実践をもって、微力ながら社会に貢献していきたいと願っています。


■おふくろの味のレシピ

黒住教 副教主
教務総長
黒住宗道

地縁・血縁の希薄化と深刻な過疎・高齢化に、全国の地方は喘(あえ)いでいます。故郷の温もりやご先祖への想い、代々受け継がれてきた伝統・文化・信仰といった“根っこ”の大切さが顧みられることなく忘れられつつある、と申せば言い過ぎでしょうか…?

時代の移ろいを悲観的に語るべきではありませんが、自然に伝わった大切なことが、本気で伝えようと努力しないと伝わらなくなったことを実感します。

家の信仰なぞは、正に伝わりにくくなった象徴的な存在で、宗教者として、日々次世代への信仰の伝承の難しさを痛感しています。分かりやすい「おふくろの味のレシピ」を書いて渡してやらないと、“わが家の味”は伝わらないと自覚しなければならない時代なのだと思います。


■助け合いの大切さを伝え続ける

天理教 表統領
中田善亮

人間関係の希薄化が言われて久しいですが、若い世代にとってはそれが当たり前の事となり、なぜ問題なのかさえ分からない人が増えている事に憂慮の念を覚えます。
順風満帆の状況が続けばそれに慣れてしまい、少しの異変には気づかなくなりがちです。同時に、異変に対処する力さえ削がれてしまいかねません。

あらゆる場面で合理化が進み、暮らしが豊かになりましたが、人は自分の力だけで生きているのではなく、助け合い、支え合い、生かされているお互いであります。

自己中心的な考えは心を曇らせ、こうした事も分からなくさせます。心と心の繋がりが薄れ、争いの基にもなり、また、助けを求めている人の心の声さえ届かなくなります。
時代が移り変わろうとも、地球上のありとあらゆるものに感謝し、与(たま)わる恩を知らねばなりません。思いやる心の大切さ、助け合う大切さを伝え続けていく事が求められていると思います。


■新年を迎えて

浄土真宗本願寺派 総長
石上智康

現代社会は、科学技術の発達や経済の成長により便利で豊かになりました。しかし、人間の自己中心的な考えはいよいよ強まり、他のいのちも自分のいのちも同じように尊いことを忘れた生き方になってしまい、その尊厳を傷つける差別や争いは後を絶ちません。

今こそ私たちは、いのちの尊さにめざめ、自己中心的な欲望の追求を見直さねばなりません。宗祖親鸞聖人は「世のなか 安穏なれ」と願われました。お覚(さと)りの智慧に教え導かれることによって、凡愚なる私の在り方に気づかされるとともに、人びとの苦しみに共感し、共に手を携えて歩む道が開かれます。あらゆるいのちは平等であり、さまざまなご縁のつながりの中で相い依(たよ)り、相い支え合って生きているのです。その尊さをかみしめて歩むことが大切です。

自他共に心豊かに生きることのできる社会の実現をめざし、いっそう力強く歩みを進めてまいりましょう。


■世界平和の実現を目指して

念法眞教 教務総長
桶屋良祐

謹んで新春のお慶びを申し上げます。皆様が新年を健やかに明るく楽しく過ごされることをお祈り申し上げます。

念法眞教はお蔭様で昨年8月3日に立教九十年祭を勤修させて頂きました。天台宗や真言宗などの仏教だけでなく、貴教会をはじめ神道の先生方のご来駕も賜り、誠に有難く存じます。

ところが、海外では宗教が関わる戦争やテロ、内戦が各地で起き、難民が安全を求めて避難するニュースを見ていて胸が痛くなります。

私共の開祖親先生は「宗教、思想、国境、民族を超えて皆友達になろう」とお諭(さと)しになりました。宗教者の和合なくして、世界平和の実現はないと思います。本年も宜しくお願い申し上げます。


■まず“地球に感謝する心”から

国際宗教同志会 会長
一燈園 当番
西田多戈止

金光教泉尾教会の皆様 新年おめでとうございます。

昨年12月、パリで開催されたCOP21では、一九〇余カ国の首脳が集まって温室効果ガス排出削減の目標を議論し、『パリ協定』が採択されましたが、人類が自国中心主義、人間中心主義の態度を改めぬ限り、合意は可能はできても目標達成は困難でしょう。

20年前、三宅歳雄先生のご理解を得、光雄先生に格別のご協力をいただいて、神道、仏教、キリスト教の十八のご教団の宗教協力で完成した日南海岸の『地球感謝の鐘』(世界で唯一)の縁起文には、「地球は人類のためだけのものではありません。神仏は暫く預けて試しているのです。貪欲な生活が反省され、敬虔な生活者が預かることになりましょう」と未来を予測しています。

大切なのは、先ず地球に感謝する心からです。


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