2019年新春メッセージ

新しい年を迎えるにあたって、激動する現代社会において宗教者は何をなすべきかについて、各宗派教団の指導者の先生方からメッセージを頂戴した。

今、宗教者に求められるもの(順不同・敬称略)

  • 第257世 天台座主
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    森川宏映

    互いに思いやる社会を

    昨年、日本は天変地異が相次ぎました。

    その原因のひとつに、人類が科学発展、技術進歩の名の下に地球環境の破壊を推し進め、大自然の豊かな恵みに感謝する姿勢が欠けていることがあるように思われます。
    人類は物質文明に押しつぶされそうになっている現実に目を開き、誤りのない道を進まなくてはなりません。

    そのためには、宗祖大師の示された「己を忘れて他を利する」また「一隅を照らす」という原点に立ち返ることです。そして互いを思いやる社会をつくってまいりましょう。
    皆様のご多幸と、お力添えを祈念いたします。

  • 神社本庁 総長・石清水八幡宮 宮司
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    田中恆清

    伝統ある日本の心を後世に伝えていく

    先ず以て、聖寿の万歳と皇室の弥栄をお喜び申し上げ、謹んで新年の賀詞を申し上げます。

    教会長様、総長様をはじめ皆様におかれましては、日頃から格別のご交誼を頂きますこと、改めまして厚く御礼申し上げますと共に、本年も相変わりませぬご厚情を賜りますようお願い申し上げる次第であります。

    本年は、いよいよ御代替わりの佳節の年であります。今上陛下の御聖徳を仰ぎ奉り、新帝陛下のご即位を奉祝し、皇室敬慕の念を涵養する年となりましょう。

    さて昨年は、未曾有の自然災害が頻発し、多大な被害を各地にもたらしましたが、日本人は助け合いの精神を発揮して、復旧活動に全力で取り組んできました。

    しかしながら昨今の日本は、従来起こり得なかったような事件・事故が発生する等、今までの日本人の価値観が大きく揺らいでいる不安定な時代でもあります。

    このような時代こそ、日本人が古来伝えてきた、助け合いの心、和の心、思いやりの心を思い起こし、「公」へ奉仕する伝統精神を後世に伝えていく必要がありましょう。

  • 和宗総本山四天王寺 管長
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    森田俊朗

    大阪万博と宗教者の使命

    新年おめでとうございます。御代替わりの年、本年もよろしくお願い申し上げます。

    実は、この原稿を書き出したところで2025年万博の大阪決定のニュースがあり、やや複雑な気持ちで聴いております。テレビでは1970年万博の様子を繰り返し、全国民の半分以上が入場したといわれるお祭りの再現と囃し立てています。

    確かに、あの万博で大阪は盛り上り、交通網をはじめとする社会資本の一気の充実は生活の快適さをもたらしました。

    しかし、戦後復興が一段落し成長期だったあの頃とは違い、今は成熟期です。経済界は活気づき、内外の来阪者は大幅に増えると思いますが、一つ間違うと祭の後に何が残るのか、地方の衰退に拍車がかからぬか、宗教者も直視し発言することが求められます。

  • 金峯山修験本宗 管長・総本山金峯山寺 管領
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    五條良知

    今できることを少し頑張って

    平成31年の新春を迎え、謹んでお慶びを申しあげます。

    教会長様、総長様をはじめ皆様におかれましては、日頃からご高配を頂きますこと、あらためまして厚く御礼申しあげます。

    さて、平成最後となりますお正月を迎え、思いますことは、ただ今ここにある事に感謝する。その一言であると思うのです。

    世相が乱れ、権力争いや自己主張の渦巻く中、今上陛下を始め皆様が、国土国家国民の平安を常に念じて下さっている。そして、日本中の宗教者が、誰に頼まれることもなく、万人の安楽を祈っておられる。なんと有り難いことでしょう。そこに感謝したとき、宗教者はさらに自身の信仰にいのちがけで取り組み、そしてご縁の教信徒は、今できることを少し頑張って、日常の精進を怠らないことが大切だと思うのです。

    平安に皇位が継承され御代替わりがなされる日本で良かったです。

    合掌

  • 立正佼成会 会長・WCRP日本委員会 会長
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    庭野日鑛

    今日のつとめの田草取るなり

    人生には、不安がついてまわります。病気や人間関係、家計、老後、さらには自然災害、国際緊張など、考え出したらきりがありません。

    二宮尊徳翁の道歌に、「この秋は 雨か嵐か知らねども  今日のつとめの田草取るなり」とあります。

    秋になると雨が降ったり、嵐に襲われたりして、稲作がどうなるか分からない。しかし、いまはとにかく雑草を取り除くことが大切という意味合いです。

    未来は、現在の行動によって、良い方向にも、悪い方向にも変化します。

    行く末をあれこれ思い煩って、いま為すべきことを疎かにしたりせず、目の前の人、目の前の出来事に、いつも全力を尽くしていく―その積み重ねが、未来を切り拓くことを心したいと思います。

  • 日本聖公会 首座主教・WCRP日本委員会 理事長
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    植松 誠

    他者との共存、共生に

    新年おめでとうございます。

    いつも世界平和のために熱心に取り組んでいらっしゃる御教団に、心からの感謝を申し上げます。

    現在の世界を見回しますと、貧富の差の拡大、紛争、飢餓、難民問題などが多くの地域で見られます。また人間の文明が創り出した温暖化も、これからの人類の生存の大きな脅威になっています。それらに対して多くの国が、自国中心の右傾化に政策を転換しています。

    グローバル化が避けられないこの時代に、自分の国だけ良ければいいなどという妄想に捉われている政治家たち。宗教者というのは、そのような中で、自己中心の生き方から他者との共存、共生に価値を見出すことのできる人々です。世界平和への協働に、私たち宗教者の献身が求められていると思います。

  • 大本 教主
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    出口 紅

    天地のご恩を忘れてはいけない

    謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

    本年は平成という時代から新たな御世への幕開けとなります。

    振り返りますと、平和で穏やかな世を願って始まった平成の時代ではありましたが、自然災害や異常気象、戦争やテロ、飢餓、病気など、私たちの想像を超える出来事が頻発いたしました。その要因の根本には、神仏への畏敬の念と天地のご恩を忘れた人類の「利己主義(われよし)・弱肉強食(つよいものがち)」の精神があることを、真摯(しんし)に省みなければなりません。

    今こそ私たちは初心に立ち返り、真剣な祈りとともに宗教者としてこの困難な時代を生きる人々に希望と光明をお示しできますよう、努力してまいりたいと存じます。
    本年が平安で穏やかな1年となりますよう心からお祈り申し上げます。

  • 黒住教 教主
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    黒住宗道

    暮らしの基本に「敬神崇祖(けいしんすうそ)

    「敬神崇祖」という言葉を知らない人が多い時代になりました。古来日本人が重んじてきた「神々を敬い、先祖を崇(あが)める」という、神様とご先祖様を同じ心で崇敬する伝統的宗教心を、現代人に取り戻してもらいたいと願っています。

    わが国古来の神道の「八百萬神(やおよろずのかみ)信仰」は、森羅万象の妙(たえ)なるはたらきを神と称(たた)えてきた伝統です。自然の猛威に接するたびに、科学技術の発展によって、その仕組みは解明できても、恐れ敬い謹み畏み奉るべき対象であることに変わりはないことを実感します。

    日々の暮らしから“手を合わす習慣”がなくなり、人の死さえも“処理”されるような時代に、私たち宗教者の使命はいよいよ重いと確信します。

  • 円応教 教主
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    深田充啓

    元を忘れず

    謹んで新年のお慶びを申し上げます。

    初代教会長 三宅歳雄先生は「人よ幸いであれ」「人が助かりさえすればよし」のご念願をお遺(のこ)しになり、大阪にその基盤を作られました。そして二代目教会長 三宅龍雄先生も、多くの方々の幸せを祈り続けられました。そんな偉大な先生方のご遺志を現教会長 三宅光雄先生が、立派に継承され、何事においても元を忘れず、道を大きく広げ邁進(まいしん)されています。

    私どもの教祖も「なんでも 元が大事ということは 何に限りなし」という言葉を遺しております。生命の元である、氏神様を尊び、ご先祖様を敬い、生かされている感謝を忘れず、歩ませていただくことは、何よりも大切なことです。

    そんな地道な歩みの中に、敬虔(けいけん)な心が芽生え、そして感謝の心が育まれ、何事もありがたいと受け止め、自然に心の恵みを頂くのではないかと思います。それが自然と福を呼び、ご縁頂く方々に幸せと笑顔をお届けできると信じております。

    金光教泉尾教会信徒の皆々様の、新たなる一年のご多幸を心よりお祈り申し上げます。

  • 妙智會教団 法嗣
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    宮本惠司

    デジタル社会をどう生きるか

    謹んで新年のお喜びを申し上げます

    昨年の11月、UAE政府、アブダビ首長国皇太子殿下の招聘を受け、三宅光雄教会長先生とご一緒し、『デジタル世界における子どもの尊厳』をテーマにした国際会議に出席いたしました。

    その会議で私は、日本の仏教徒を代表して「宗教者の役割」について提言しました。
    古来(いにしえ)から、宗教者は科学や医学の先導者として時代を支えて来ました。しかし、近世では各分野の役割が明確化され、科学技術や医療などが高度に発達しました。
    さらに、急速にデジタル化が進む今、私たちはその環境におかれていることを深く認識しなければならないと思います。

    デジタル世界の中、宗教者は、科学、医学などの各分野と連携をとり、人々が何を活かしどう生きていくのかを示唆することが重要であり、これからの役割ではないでしょうか。

    祈りを根幹に、たえず内省をもって、人々のために貢献していきたいと願っています。

  • 松緑神道大和山 教主
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    田澤清喜

    個の可能性

    「みんなで仲良く生きていきたい」

    漠然とした感情ですが、希望と難しさを含んだ気持ちです。

    「人の世の幸いは、人と我とつながりて、共に和し、共に助け合い、力を合わせて和の心に生きてゆくところにぞあるべし。」と教団の教えにあります。私たちは独(ひと)りではなく、多くの総(すべ)てと繋がることのできる存在であると信じるものです。人間が二人居るとき、そこには既に不和を生じる要素があります。不和を考え、関わりを避けることもできます。関わるからこそ得られることもあります。そして、和もあります。

    生きづらさを感じるとき、個の可能性を信じて、生きやすい環境づくりにチャレンジしてみたくなる自分がいます。今年も前を向いて進みます。

  • 浄土真宗本願寺派 総長
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    石上智康

    貧困の克服に向けて

    宗門では、「貧困の克服に向けて~Dāna for World Peace~子どもたちを育むために」と実践目標を掲げ、仏法に基づく具体的な社会貢献をめざし、取り組みを進めています。

    貧困問題は、「SDGs」(持続可能な開発目標)の冒頭にもある国際的課題です。お釈迦様以来、仏教が大切にしてきた「布施」の精神に学び、多くの人や寺院が参画でき、念仏者が行うにふさわしい活動として取り組むものです。

    親鸞聖人が示された浄土真宗の救い、「我にまかせよ そのまま救う」とはたらいてくださる阿弥陀様のお慈悲ひとすじにこの身をお任せし、安心をいただくと共に、自他共に心豊かに生きることのできる社会の実現に貢献するため、世界の人びとと共に、できるところから取り組んでいければと願ってやみません。

  • 天理教 表統領
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    中田善亮

    揺るぎない範を示す

    昨年も国内外において、自己中心的な、目先の利害の追求や対立が見受けられました。心の拠り所を持たぬが故のそうした動きは、止まるどころか加速し続けている感さえします。

    特に近年は、ウェブという大きな技術革新により、お互いの物理的距離に関係なく、世界中の人びとが瞬時に交わることが可能となりました。それは同時に、お互いの異なる価値観や文化の交わりを生みます。そんな時代だからなおさらに、違いを尊重する心、相手を思いやる心の大切さが一段と増していると思います。

    激変する時代だからこそ、変えてはならない、本当に大事なものは何かを見つめ直し、まず私たち宗教者から範を示していくことが大切だと感じています。

  • 念法眞教 教務総長
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    一宮良範

    信仰の素晴らしさを伝えていく

    海外では、宗教間の対立がテロの要因となり、紛争や戦争に発展することもあります。多くの人が犠牲になり、恨み辛みが募り、それが新たな争いの種になります。

    世界平和を実現するには「怨親平等」の実践しかない、と思います。「敵と味方を平等に扱う」という考えです。

    ところで、日本人はハロウィンやクリスマス、初詣など様々な宗教行事を楽しみますが、日頃から神仏を意識して、自分を律して周りの人に優しく親切にしている人はどれだけいるのでしょうか。日々、わが身を振り返り、人格を磨かないと「怨親平等」の実践は難しいと思います。

    まず私たち宗教者が実践して手本を示さなければなりません。務めを果たすべく、精進する毎日です。

    本年が皆様にとりまして、幸多き年となりますよう心よりお祈り申し上げます。本年もよろしくお願いいたします。

    合掌