ローマで第2バチカン公会議50周年記念シンポに

2015年10月26日〜29日
金光教泉尾教会 総長
三宅善信

2015年10月27日、ローマの教皇庁立グレゴリアン大学で開催された第2バチカン公会議50周年記念シンポジウム『ノストラ・エターテ』に出席した。28日には、8月に引き続き、フランシスコ教皇に謁見した。

「第2バチカン公会議」とは、現代におけるローマ・カトリック教会のあり方を探るため、1962年10月11日に教皇ヨハネス23世の下に招集され、2,500名以上の司教と修道会総長らが五大陸86カ国から集い、期間中に教皇がパウロ6世に代替わりするなどの曲折を経て、1965年12月7日に閉幕するまで4年間の長きにわたって、4期に分けて様々な問題について検討を重ねたという、1,900年間に及ぶカトリック教会史上の大きなエポックメイキングな出来事であった。これ以後、従来はごく少数の神学者しか理解することのできないラテン語で行われていた世界各地の教会での典礼(礼拝様式)を、その国の国語で行うことが許可されるなど、カトリック教会の「アジョルナメント(現代社会への適応)」が推進されることとなった。最終日には、1054年以来、ローマ帝国の東西分裂の影響で900年以上の長きにわたって、相互に破門し合っていた東方正教会との間で、破門を解き合った。

中でも、1965年10月28日に採択された決議『ノストラ・エターテ』は、1,900年間にわたってカトリック教会が主張してきた「カトリック教会だけが唯一の正しい宗教である」という立場を180度転換して、東方各正教会やプロテスタント諸教派との間で、同じキリスト教徒としての一致点を探る「エキュメニカル」運動を推進するだけでなく、原理的には「(キリスト教と)同じ唯一神」を戴いているユダヤ教徒やイスラム教徒に対しても、対話のドアを開いた。この動きはさらに、「異なった神々」を戴いているヒンズー教や仏教その他の世界の諸宗教に対しても「真理の一部が共有されている」として、その後の世界中の諸宗教対話の動きに計り知れない影響を与えた。

グレゴリアン大学で開催された第2バチカン公会議50周年記念シンポの様子
グレゴリアン大学で開催された第2バチカン公会議50周年記念シンポの様子

この動きを受けて、大恩師親先生は1968年にバチカンを訪問し、教皇パウロ6世と単独謁見され、パウロ6世の勧めで、翌1969年にイスタンブール(=東ローマ帝国の首都コンスタンチノープル)に東方正教会の総主教アテナゴラス1世を、そして英国国教会の首座であるカンタベリー大主教を相次いで訪問され、1970年京都で開催されることになったWCRP(世界宗教者平和会議)への協力を説かれた一点だけをみても、第2バチカン公会議の影響がどれほどのものであったか判るであろう。

この50周年記念シンポジウムが10月26日から28日までの日程で、ローマ市内にある教皇庁立グレゴリアン大学で開催され、世界各国から約300名の宗教者が一堂に会した。26日の夕方に行われた開会式では、グレゴリアン大学のフランソワ・ハビエル・ドゥモルティア学長からの歓迎の辞と、教皇庁キリスト教一致評議会議長のクルト・コッホ枢機卿と諸宗教対話評議会議長のジャンルイ・トゥーラン枢機卿から祝辞が述べられたが、親先生は、25日の秋の大祭をご奉仕された翌26日の朝に日本を発たれたので、27日朝のセッションからの参加となった。

第2バチカン公会議50周年記念シンポで発言する三宅善信総長
第2バチカン公会議50周年記念シンポで発言する三宅善信総長

27日は、まず『諸宗教対話』というテーマで2人の専門家の基調講演が行われ、次に、『暴力と平和のための宗教の関わり』というテーマで、イタリアイスラム中央協議会のアブドラ・レドゥアンヌ事務総長と米国ユダヤ教会のデビッド・ローゼン対話局長がパネリストしてぞれぞれの見解を発表した後、フロアを交えて討論が行われた。続いて、同じテーマで、聖エジディオ共同体のアルベルト・クワトルッチ事務局長とスリランカのジャヤワラデネ大学総長のB・ウィマララタナ大僧正がパネリストを務めた。この際、参加した日本人では唯一、善信先生がフロアから質問を行い注目された。昼食休憩に続いて、午後も同様の形式で『信教の自由の挑戦』というテーマでディスカッションが繰り広げられた。

大群衆が埋め尽くしたサンピエトロ大聖堂前広場でフランシスコ教皇と謁見した
大群衆が埋め尽くしたサンピエトロ大聖堂前広場でフランシスコ教皇と謁見した

『ノストラ・エターテ』採択50周年当日に当たる28日は、あいにく朝からの雨天であったが、フランシスコ教皇の「人気」は凄まじく、全世界から3万人近い巡礼団が、サン・ピエトロ広場とパウロ6世記念謁見ホールを埋め尽くした。数カ国で行われたこの日の祈りは『ノストラ・エターテ』に関するもの一色であったが、約1時間に及ぶ(雨中の待ち時間を含むと3時間)礼拝の終了後、今回のシンポジウムの参加者を代表して、世界各国からの宗教指導者と共に、日本からは出口紅大本教主、宮本惠司妙智会法嗣、庭野光祥立正佼成会次代会長、山口英雄天理教大ローマ布教所長、宝積玄承京都国際禅堂代表および三宅光雄金光教泉尾教会長の6名がフランシスコ教皇と謁見した。

この後、夕方にもう一度、グレゴリアン大学に戻って、最終セッションが行われ、バチカンの国務長官であるピエトロ・パロリン枢機卿の挨拶で全日程を終え、翌29日早朝の便で帰国の途に就いた





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