三宅善信代表 マケドニア政府に招かれ首相らと会見

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 2010年5月6日から8日、マケドニア共和国の古都オフリドにて、第2回「諸宗教と諸文明の対話」世界会議が同国政府の主催によって『宗教と文化:諸国民の間における本質的な関係』をテーマに開催され、現地で有力な三つの宗教である東方各国正教会・ローマカトリック教会・イスラムの指導者ならびに、ニコラ・グルエフスキー首相をはじめとする同国の閣僚や欧州議会関係者、また、この会議を後援したユネスコ欧州本部関係者を中心に百数十名が参加した。日本人としては唯一、レルネットの三宅善信代表が招かれた。

  「欧州の火薬庫」と呼ばれるバルカン半島は、1990年代の旧ユーゴスラビア連邦の解体にともなう“内戦”で、比較的裕福であった北西部のスロベニアとクロアチアを除くボスニア・ヘルツェゴビナやセルビア・モンテネグロなどでは、多くの尊い犠牲と引き替えに、それぞれ六つの共和国が“独立”したが、そこでのキーワードは“宗教”と“民族”であった。マケドニアは、東ローマ(ビザンツ)帝国時代のギリシャ正教、中世オスマン帝国(トルコ)時代のイスラム、近世オーストリア・ハンガリー二重帝国時代のカトリック、20世紀のユーゴスラビア連邦時代の共産主義と、その都度、支配者の宗教・イデオロギーに翻弄されてきた歴史もあって、旧ユーゴ連邦構成六共和国の独立後も、それぞれが域内に「少数民族」と「宗教的少数派」を抱えて社会不安の原因となっている。


マケドニア正教会の首座主教ステファンと三宅善信代表

 特に、マケドニア共和国においては、かつて毛沢東主義を追求して「欧州の北朝鮮」と言われた鎖国体制のアルバニアに接していたため、同国から逃げ出したイスラム教徒のアルバニア系住民が多数在住している。また、近代以後において、常に「ユーゴスラビアの盟主」であった隣国セルビアとの教会の主導権争い、さらには、隣国ギリシャとの「マケドニア」国号使用問題(註:マケドニアに接するギリシャ北西部に多数のマケドニア系住民が居るので、彼らの「離反」とマケドニアへの統合を画策する可能性があるので、EU加盟国のギリシャ政府がマケドニア共和国の独立を承認しないので、EUもマケドニア共和国を承認できない)等を抱え、EU加盟を目指しているマケドニア政府にとっても、少数民族や宗教的マイノリティの人権を積極的に擁護している国家であるということを目に見える形で担保するということが至上命題となっている。

 そこで、アメリカとEU代表立ち会いの下、2001年に締結された『オフリド枠組合意』(少数派アルバニア系住民の保護をマケドニア政府が確約)に因む世界遺産の宗教都市オフリドで、2007年に続いて、今回の「諸宗教と諸文明の対話」世界会議がオフリド湖畔の隣接するメトロポールホテルとベルビューホテルを会場に開催され、6日夜には、ベルビューホテルでのエリザベータ・ミレフスカ文化大臣主催の歓迎晩餐会が行われた。彼女は、第2回オフリド会議組織委員会の国際委員長として、ユネスコ欧州本部と共同して、早くから今回の世界会議の準備を進めてきた。今回の会議には、当然のことながら、マケドニアの歴史的・宗教的経緯から、東方各正教会、カトリック教会、イスラム教の指導者が主流を占めたことは言うまでもない。


バチカン首席代表のヴィンコ・プルジッチ枢機卿と三宅善信代表

 7日朝、メトロポールホテルにて開会式が行われた。最初に、主催者であるマケドニア政府を代表して、ニコラ・グルエフスキー首相が開会挨拶を行った。さらに、ミレフスカ文化大臣と欧州議会代表のグイド・チェッコリ氏が開会の挨拶行った。首相と文化大臣は、首都スコピエから陸路3時間以上離れたこのオフリドの地で会議が開催されたにもかかわらず、全日程を通して本会議に参加した。開会式には、欧州各国を中心に参加者の数よりも多いマスコミが訪れた。

 日本人として唯一招かれた三宅善信レルネット代表は、グルエフスキー首相をはじめ、多くの宗教指導者たちと意見交換すると共に、東欧数カ国のテレビ局の報道番組に次々と出演した。同志社大学大学院神学研究科で東方正教会の儀礼研究で学位を取得している三宅代表は、東欧各国の正教会の指導者とも神学的内容に踏み込んだ対話ができる日本の宗教界では希有な存在で、代表と同じ指導教授の一年後輩には、現在、安全保障問題や諜報活動の専門家として講演や出版で引っ張りだこの佐藤優氏(休職中外交官)が居る。


マケドニアのグルエフスキー首相と三宅善信代表

 続いて、基調講演として、マケドニア正教会の首座ステファン大主教、マケドニア・イスラム協会のウレマ・スレイマン会長、バチカン代表団首席のヴィンコ・プルジッチ枢機卿(サラエボ大司教)、合同メソジスト教会のハインリッヒ・ボッレター主教(オーストリア)、国際ユダヤ人協会のアンドリュー・ベイカー代表(米国)、ユネスコ欧州地域局のエンゲルベルト・ルオッス局長(イタリア)、欧州議会事務総長代表のキャロル・ライッヒ女史(フランス)らが基調講演を行なった。

 それに続いて『宗教と文化:平和の諸要因』と題する全体討議が、また、夕方には、『社会変容における宗教と文化の役割』と題するパネル討議も行われた。この日の晩は、フルオーケストラ付きのベルビューホテルのプールサイドで、グルエフスキー首相主催の壮麗な晩餐会が催された。


パネリストのひとりとしてスピーチする三宅善信代表

 8日の朝は、全体討議に続いて、『平和と繁栄を確立するための宗教的権利と文化的多様性への敬意』と題するパネルディスカッションが開催され、三宅善信代表が発表者の一人を務めた。このディスカッションは半日続き、日本はおろか、中国からも新疆ウイグル自治区出身のイスラム教徒が一人、インドネシアのイスラム教徒が一人参加しているだけで、東南アジアや北東アジアの仏教徒やヒンズー教徒が一人も招かれていない会議メンバーの構成上、どうしても一神教中心の議論になりがちな流れを変えるべく、三宅代表はひとりで挑発的な議論を挑んでいた。


三宅善信代表のスピーチ中の会場

 この日は、ギョルギー・イワノフ大統領主催の盛大な午餐会が催された。また、午後の部では『宗教的な文献の中で女性はいかに記述されてきたか?』というテーマのフォーラムが開催された。さらに、閉会式では三年後に開催される第3回オフリド会議の役員を選出し、今大会の宣言文の採択を行って、三日間にわたる会議を閉幕した。



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