三宅代表 イスラエルで9.11十周年を

 9/11



ユダヤ教の聖地「嘆きの壁」での祈りを終えて。 キリストが十字架を担いで歩んだと伝えられる
ドロローサ通りも現在ではアラブ人地区内に

  9月10日から12日にかけて、三宅善信代表はイスラエルを訪問した。10日の土曜日は、ユダヤ教の安息日のため、ホテルでも戒律に従って火(註:電子レンジ等の電気も火に含むので、電話やメイルにも応答しない)を使った暖かい料理が供せられず、公共交通機関も全面的にストップする中で、三宅代表は旧市街の日本ではほとんど接することのできないアルメニア教会地区やアラブ人地区を訪れ、彼らと意見交換を行った。また、イスラエル当局による物々しい警備の中をユダヤ人の“聖地”である「嘆きの壁」を訪れ、世界平和を祈った。さらに、同志社大学神学部時代にヘブル語(ヘブライ語)も学んだ三宅代表は、ユダヤ教の礼拝堂であるシナゴーグを訪れ、安息日の祈りを共にした。


旧友のヤフーダ・ストロフ博士と共に、
日本研究の大家ベン=アミー・シロニー博士(左)の自宅を訪れた三宅代表

  11日は、三宅代表はイスラエルにおける日本研究の大家であるヘブライ大学名誉教授のベン=アミー・シロニー博士(日本研究が評価されて、勲二等瑞宝章を受章)の自宅を表敬得訪問し、「いとこ間の結婚が可能」(例えば、菅直人前首相と伸子夫人もいとこ同士)という世界でも稀な婚姻形態を共有するユダヤ人と日本人という話題から始まり、天皇陛下の敬語の使い方等、各方面に議論が大いに盛り上がった。


イエスを身籠もったマリア(左)と洗礼者ヨハネを身籠もった
エリザベスとヘブル語で書かれた珍しいイコン

  午後からは、ヘブル語を話すカトリック教徒のためのラテン総主教庁を訪れ、ダビデ・ニューハウス副主教とイスラエルにおける宗教的少数派(マイノリティ)の問題について話し合った。ヘブル語を母国語とするユダヤ教徒やアラビア語を母国語とするイスラム教徒はいくらでも居るが、ヘブル語やアラビア語を母国語とするキリスト教徒はごく少数であるが故に生じるさまざまな人権問題について、中国におけるチベット人仏教徒やイラクにおけるキリスト教など、宗教的・民族的少数派の人権擁護活動を積極的に展開していると同時に、かつて東方正教会の儀礼研究で修士号を得た三宅善信代表は、大変貴重なヘブル語で書かれたイコンで飾られた同総主教庁の聖堂を見学した。


9.11Grand Zero写真展の開幕式典で挨拶するイスラエルのネタニエフ首相。
 同写真展を見学する三宅善信代表

  夕方には、エルサレムのアメリカ文化センターで開催された「9.11米国中枢同時多発テロ十周年記念写真展“Ground Zero”開幕式典」に出席した。物々しい警備下で行われた同式典には、ネタニエフ首相やシャピリオ駐イスラエル大使も臨席し、イスラエルと米国の一衣帯水の関係を見せつけた。特に、ムバラク長期独裁政権崩壊後のエジプトにおいて、カイロのイスラエル大使館がエジプト市民の暴徒によって襲撃を受けている最中であったので、あらためて、この問題の根深さが明白になったが、式典終了時に斉唱されたアメリカ合衆国国歌『星条旗』を式典に参加してイスラエル市民のほとんどが唱えたのは両国の関係を象徴している。


世界中どこにでもあるマクドですら、イスラエル国内では「Kosher」様式を遵守するため、
チーズバーガーやマックシェイクは不可

  この日の晩は、三宅代表が支援しているイスラエル人とパレスチナ人の対話促進を実施しているNGOであるInterfaith Encounter Associationの中心者であるシュロモ・アロン博士とヤフーダ・ストロフ博士と「コーシャー」(註:ユダヤ教徒の戒律に則った食事。「正しい屠殺方法で血抜きをした肉しか食してはいけない」、「乳製品と肉を一緒に食べてはいけない」、「反芻して、蹄の割れている動物(=牛と羊)の肉しか食してはいけない」、「水中に棲む生きもので鱗と鰭のないもの(=甲殻類や貝類)は食してはいけない」等々、詳細な規定がある)様式の鮨を共にしながら、様々な問題について意見交換を行った。


イスラエル国内に延々と続くパレスチナ人避けの「壁」。
 「壁」の向こう側に居るアラブ人の族長と歓談する三宅善信代表

  三宅善信代表はさらに、総延長数十キロもの「壁」を造って分離しなければユダヤ人の安全が確保できないなど、イスラエルによる対パレスチナ政策の矛盾が露呈しているヨルダン川西岸の占領地域(イスラエル側の表現では「入植地域」)を訪問し、最も係争が激しいヘブロン地区のアラブ人族長シェイク・アブハデル・ジャバリ氏と、同氏が治める千エーカー(約120万坪)の荒涼たる砂漠内でのテントで会談。同氏は「イスラム教徒もユダヤ教徒も宗教上の理由で“聖地”を明け渡すことができない以上、いかに平和的に共存してゆけるかが大切で、そのための相互信頼醸成が必要」と延べ、三宅代表は、「諸宗教が平和裏に共存している日本のモデルをぜひ参考にして欲しい。われわれにできることがあれば何でも協力する」と延べ、三宅代表の推進している諸宗教対話プログラムのDVDを贈呈した。ジャバリ氏は「あのような大地震と大津波にも不屈の闘志を見せて国土再建に励んでいる日本人を尊敬している」と述べるなど、終始和やかな雰囲気で会談は進んだ。


ラビたちとの神学論争で気を吐く三宅善信代表

  その後、三宅代表は、ユダヤ人入植地内でキリスト教とユダヤ教の理解と協力センターを訪れ、昼食代わりのフルーツを食しながら、ラビ(ユダヤ教の宗教指導者)たちと積極的に神学論争(例えば、「神が一人でない場合は、社会正義の源泉を何に求めるのか?」といったテーマ)を展開。中には、最近来日した経験のあるラビも居て、「多神教の日本人とでも、このように宗教対話が可能なのであるから、イスラム教徒とも実際に面と向かってしっかりと対話を進めて欲しい」と依頼した。


「正しいユダヤ人」になるためには、膨大な律法の解釈を修得しなければならない
少年たちの教育現場

  最後に、入植地内のユダヤ教徒の青少年たちが民族のアイデンティティを維持するための宗教教育を受ける施設を訪問し、分厚い律法の解釈集を暗記する様子を見学し、実質二日間のイスラエルにおける予定をすべて終了し、テルアビブ空港から次の訪問地であるローマへ向かった。



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