2013年11月20日から22日まで、ウィーンのヒルトンホテルを会場に第9回WCRP世界大会が『他者と共に生きる歓び』をテーマに開催され、世界各地から約600人の宗教指導者が参集した。
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開会式に色とりどりの民族衣装で世界各地から参集した諸宗教の代表 |
今回の世界大会の最大の特徴は、サウジアラビア国王が創設したKAICIID(アブドラ国王国際諸宗教・諸文化対話センター)が共催団体となって、ヒト・モノ・カネで全面的にバックアップしているという点である。それゆえ、従来の欧米のキリスト教や日本の教団中心の会議構成からアラブ中心のそれへと変革しており、中東やアフリカからの参加者が増えた半面、日本や中南米からの参加者数が減った。
色とりどりの装束に身を包んだ世界各国から宗教指導者が一堂に会する中、開会式は20日の朝から始まった。L・キシコフスキー実務議長の下、パン・ギムン(潘基文)国連事務総長からの祝辞をはじめ、F・ムアマアルKAICIID事務総長やエラ・ガンジー女史(マハトマ・ガンジーの孫)やW・ベンドレイ事務総長が挨拶を行った。続いて、「子供の保護」に関する特別セッションが行われ、ユニセフのL・バリー局長らが発題を行った。
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三宅善信代表も正装して開会式に列席した |
午後からは、本大会のテーマである『他者と共に生きる歓び』と題する全体会合が行われ、サウジアラビアのA・ビン=バッヤ地球刷新センター会長やアメリカユダヤ人協会のD・ローゼン国際局長や庭野日鑛立正佼成会会長らが発題と討論を行った。その後、今大会の4つのサブテーマ、すなわち、@「紛争予防・解決を通して」、A「正しく調和のとれた社会を通して」、B「地球を尊重する人間開発を通して」、C「諸宗教教育を通して」に分かれて分科会を行った。
夕方には、第1分科会での議論を集約したものが、ノーベル平和賞の選考委員でもあるG・シュタルセット名誉オスロ主教らからの論点整理と共に全体会合で報告された。また、連日の昼食や夕食会の時間はもとより、各セッション間の休憩時間も、世界の各地から訪れた宗教指導者たちと意見交換を行う機会とした。WCRP日本委員会の理事でもある三宅善信代表は、WCRPを通じて長年交流があるシリア正教会のマール・イブラヒム大主教の安否について、イラクやシリアのメンバーから安否情報を尋ねた。イブラヒム師とは、ちょうど1年前にウィーンで開催されたKAICIID国際対話会議や昨年の比叡山宗教サミットの際にも話し合う機会があったが、激化するシリア内戦に伴う混乱によって、人質として拉致され220日にわたって行方不明状態が続いているからである。
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人質となっているシリア正教会大主教の無事生還を祈念して、 シリアやイラクの宗教指導者と話し合う三宅善信代表 |
2日目は、第2分科会の議論を集約したセッションから始まった。このセッションの進行は、アフリカ司教会議議長のJ・オナイエケン枢機卿である。ナイジェリアのオナイエケン枢機卿は民族的・宗教的マイノリティの人権擁護ということに大変関心を抱いている。続いて分科会が行われた。午後には、第3分科会の議論を集約したセッションが行われ、ラテンアメリカ諸宗教委員会議長のR・ダマスケノ枢機卿らが話し合いを進めた。また、「女性に対する暴力」に関する特別セッションが、国連等からの代表を招いて行われた。そして、もう一度、4つの分科会が行われた。この日の夕食後に行われたビジネスミーティングでは、向こう5年間の国際委員会の人事等について検討が行われた。
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正教会の全地総主教バルトロマイ1世の講演に耳を傾ける各国の代表たち |
大会最終日の11月22日は、国連のA・ディエン事務次長を招いて開催された「保護する責任」に関する特別セッションが行われた。これは、現在、国際社会で最も問題になっている問題で、従来の考え方では、主権国家が構成単位である国連は、多国間の戦争防止には有効に機能するが、実際に世界で多発している統治機能を失った破綻国家や独裁国家内において、無辜の民が大量に虐殺され、あるいは難民として流出しているにもかかわらず、誰も彼らに救いの手を差し伸べることができなかった現状をいかに改めてゆくかという問題である。つまり、国際社会は、こと人道や人権問題に関しては、各国の国家主権を超えて介入することができるとする考え方に基づくものである。
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左からサウジアラビア宗教大臣顧問、S・エルメス氏、カナダの先住民代表、 北朝鮮の宗教代表らと言葉を交わす三宅善信代表 |
その後、アメリカ・アフリカ・欧州・中東・アジア大洋州の五地域に分かれて地域別会合行い、第8回ACRP(アジア宗教者平和会議)が来年8月末の韓国のインチョンで開催されることが発表された。アジア地域会合には初めて北朝鮮の代表団も参加したことが注目された。また、キム・スンゴンACRP事務総長は「来夏のACRP大会がIARF世界大会と日程が重なってしまったことへのお詫び」をIARF世界大会の実務を行っている三宅代表に対して行った。
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4つの分科会が同時並行で実施された |
昼食後に、閉会式が行われ、大会の「宣言文」が採択された。今回の世界大会を最も特徴付けたのは、「アラブの春」の要因ともなったツイッターやフェイスブックといったソーシャルメディアの普及である。欧米だけでなく、アジア・アフリカ・中東の宗教者たちも、目の前の壇上で誰かが発題を行っている最中でも、掌中のスマホやタブレット端末を盛んに操作して、会場で今撮影した映像と共に、それぞれの意見をドンドンとネット上に書き込み、全世界に向けて発信していたことであった。その点でも、従来の新聞記者向けの情報提供しか用意していなかった日本側は、決定的な遅れを取っていたと思われる。