■ 宗教界の動き ■

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12月後半の宗教界の動き (0012S)
「世紀替わり」の諸行事が行われました。

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*本願寺派門主 一般誌で積極発言
先頃刊行された『中央公論』1月号に、浄土真宗本願寺派大谷光真門主と中川秀恭大妻学院理事長(キリスト教神学者)、養老孟司東京大学名誉教授(解剖学者)の三者による「宗教の世紀の幕開き」と題する座談会が掲載されており、大谷門主が各テーマにわたり積極的な発言を行ない、注目されている。この座談会は世紀末の閉塞した社会状況において宗教が果たすべき役割を探ることを目的としたもので、大村英昭関西学院大学教授が司会進行役を務めた。


☆西本願寺「瓦降ろし」見学会
西本願寺では、12月9日から16日の8日間にわたり営まれた御正忌報恩講の期間中に御影堂平成大修復の工事現場の見学会が実施された。「瓦降ろし」は11月末で完了しており、今回の見学会では「土居葺き」と呼ばれる赤杉の木を割った板が屋根一面に葺かれている状況を見学でき、9月に解体された大棟獅子口もあわせて展示された。


*高田派本山でも報恩講
真宗高田派本山専修寺では、12月9日から16日まで、「報恩講(お七夜)」が厳修され、期間中、多彩な行事が開催された。


☆大正大学学長に松濤誠達氏
12月16日、大正大学(里見達人理事長)では、松濤誠達氏が学長(第30代学長)が就任した。これは、7日に開かれた理事会で新学長に文学部国際文化学科の松濤教授が承認されたことによるもの。浄土・天台・智山・豊山の4宗派を経営母体とする大正大学では、学長職は4宗派が交代で就任することになっている。松濤教授は浄土宗出身。


*500kgの新大注連縄上がる
12月16日、奈良県生駒市の真言宗大本山宝山寺(大矢実圓貫主)の縁日に当たるこの日、大鳥居に新しい大注連(しめ)縄が張られ、約百人の信徒らが6本の縄を引っ張りながら「六根清浄」の掛け声とともに大注連縄を吊り上げ、迎春ムードを高めた。


☆存続の危機か 永平寺線の行方
12月17日、福井県松岡町の京福電鉄越前本線で、数十年前の旧式の列車を用いて運行されている永平寺線の上り電車が暴走、下り電車と正面衝突した事故で運転手1名が死亡、25人が重軽傷を負うという惨事となったが、沿線市町村からは、イメージダウンを心配する声や安全面での再検討を求める声が上がっている。また、以前からあった同線の廃線に向けた動きが早まることにも懸念の声が高まっている。もし、廃止されれば、曹洞宗大本山の永平寺への公共輸送手段による参拝が困難になる。


*総本山十八萬日大法会の円成を宗祖に奉告
12月18日、天台真盛宗の宗祖真盛上人の遺骨を祀る別格本山西蓮寺(三重県上野市)で、総本山西教寺(大津市)での「不断念仏相続十八萬日大会」の円成を宗祖に奉告する法要があり、山本孝圓菅長が導師を務め、同寺が所属する伊賀教区の僧侶や檀信徒ら約百人が参拝した。


*米国へ再び抗議書
12月18日、真宗大谷派(木越樹宗務総長)は、未臨界核実験を14日に行った米国に対し、総長名で抗議文を送付し、今回の実験に抗議すると共に、「平和と共存するために速やかなる核兵器の廃絶を」と要請した。


*ヒトES細胞研究に大本が「待った!」
12月18日、脳死臓器移植、ヒトES細胞、遺伝子組換食品などの生命倫理問題で、積極的な取組みを見せる大本(出口聖子教主)は、科学技術会議生命倫理委員会が開いた第2回ヒト胚研究小委員会に対し、委員長宛に要望書を送付。「医療関係者のみならず、広く宗教者や識者から意見を」と主張し、「拙速な議論によって、後世に禍根を残すことのないよう検討を」と求めている。


*藤堂恭俊法主の密葬営む
12月18日、徳川将軍家の菩提寺として有名な東京・芝の浄土宗大本山増上寺で、藤堂恭俊増上寺第86世法主の密葬が無導師で執り行なわれ、浄土宗各大本山法主をはじめ、約1,500人が参列した。法主の子息である藤堂祐亨信重院住職による挨拶では、法主が病床で綴った辞世の歌が二首紹介された。


*マラソンの高橋選手 西本願寺に参拝
12月18日、シドニーオリンピックの女子マラソンの金メダリスト、高橋尚子選手が、積水化学工業陸上部の小出監督らと浄土真宗本願寺派の本山(西)本願寺に参拝、10年の歳月をかけた平成大修復が進められている御影堂の素屋根に登り工事現場を見学。書院を拝観して国宝飛雲閣で蓮清典総長ら総局員と対談し、「歴史の重みを実感しました」と話した。


*公法上の地位再審理 エホバの証人
12月19日、ドイツの連邦憲法裁判所は、宗教団体「ものみの塔聖書冊子協会(通称:エホバの証人)」が、公法上の団体であることを否定した連邦行政裁判所の判決を無効とし、「宗教団体はその信条によってではなく、行動によって裁かれるべきだ」と、原審へ差し戻した。このため、連邦行政裁判所は再審理することになる。


*元輪番 1100万円賠償を
12月22日、浄土真宗本願寺(蓮清典総長)の本願寺富山別院(高田英彦輪番)が、「元輪番が別院の基本財産積立金を株式やリスクの高いワラント債で運用、バブル崩壊で9000万円余りの損失を出した」とし、この元輪番に1500万円の損害賠償の支払いを求めた訴訟の控訴審判決公判が大阪高裁で開かれ、富山別院に対して1100万円を支払うよう元輪番に命じた。


*三千院が托鉢寒行
12月23日、京都大原の三千院門跡の僧侶らは、小堀光詮門主を先頭に大原地区一帯で恒例の托鉢寒行を行った。天台宗が年末に展開している全国一斉托鉢の一環で、浄財は交通遺児らのために役立てられる。


*中国政府"邪教"取締の意志強調
12月23日、中国反邪教協会の「第1回報告会」が、北京の中国科技会堂で開催され、百余人が参加、法輪功などの"邪教"への反対闘争について討議し、「邪教に反対し、人権を保障することは、世界各国政府・人民の共同課題である」との見解を示した。(註:「邪教」=中国政府の表記に従う)


☆台湾の副総統 法輪功の大規模集会に出席
12月23日、台湾の呂秀蓮副総統は、中国で非合法化されている気功集団「法輪功」を支持する考えを示した。 中国政府から台湾独立派として厳しく非難されている同副総統は、台北市内で行われた法輪功の集会に出席した。この集会には、15カ国から約1,000人のメンバーが集まった。挨拶に立った同副総統は、メンバーらに対し、修行に励むよう呼び掛けた。参加者らはペンライトを手にし、中国で弾圧を受けて死亡した仲間を追悼するなどしていた。 これに関する中国政府のコメントは、今のところ得られていない。


*「脳とこころ」について
12月23日、智山教化センター(渡辺照敬センター長)で、現代教化フォーラムが開催された。今回で第15回を迎え、養老孟司北里大学教授が「脳とこころ:脳を知ること、心を知ること」をテーマに講演を行った。


*大谷光紹法主の一周忌 「法統護持」より篤く
12月24日、浄土真宗東本願寺(大谷光見法主、東京都台東区)は、昨年の同日死去した大谷光紹前法主(真宗大谷派大谷光暢元法主の嫡子で、昭和56年に東本願寺派を結成)の一周忌を厳修した。光見法主(光紹前法主の嫡子)の調声で勤め、故人の遺徳を偲ぶとともに来年6月に控える光見法主の傅燈式円成に向け、法統護持の念をより篤くした。


*市民と祝うクリスマス 広島
12月24・25両日、新しい千年紀に向けて、広島市中央区の世界平和記念堂(深堀升治主任司祭)で、一般市民も参加して「市民クリスマスミサ」が3回にわたって行われた。このうち24日午後6時からのミサには約1,300人が参列、聖堂内は立錐の余地がないほどの盛況であった。


*立正大学新学長に吉田榮夫氏
12月26日、日蓮宗の宗立大学である立正大学(高嶌正人理事長)は、坂詰秀一学長の任期満了(来年3月末)に伴う学長選挙を「信任投票」の形で実施した結果、地球環境科学部長の吉田榮夫教授を後任の学長(第28代)に選出した。任期は来年4月1日から3年間。


*宗門離れ ますます加速?
日蓮宗の正法クラブ(岩間湛正会長)が年末に発行した「会報」によると、宗門の法器(寺院後継者)養成機関のひとつである立正大学の現状とその行方について特集しており、見出しには「宗門離れか立正大学?」とあり、立正大学仏教学部の定員が平成14年4月から大幅に削減となることを報じている。


*コルモス30周年記念で大谷光真門主が講演
12月26〜27日、「現代における宗教の役割研究会(通称コルモス会議:中川秀恭会長)」の第47回研究会議が京都国際ホテルで開かれ、コルモス会議の30周年記念講演として、浄土真宗本願寺派の大谷光真門主が、教団人としての立場から宗教者や宗教教団が直面する課題について語り「宗教的立場からの現実社会への批判・批評が充分でない」、「実践活動がこれからの宗教教団の大きな課題だ」などと積極的な"自己批判"発言で各方面から注目された。


*戸松啓真師 (浄土宗大本山光明寺法主) 逝去
12月28日、戸松啓真浄土宗大本山光明寺法主(88歳)が心不全のため、東京都内の病院で死去した。本葬は、明年2月27日、鎌倉市の光明寺で営まれる。1989年に勲四等瑞宝章受章。


*津田信基師 (長田神社名誉宮司) 逝去
12月29日、津田信基長田神社(神戸市長田区)名誉宮司(84歳)が心不全のため、帰幽。密葬は31日、大阪府の池田八坂神社早苗の森会館で行われた。神社神道の発揚に大きな功績を残すとともに、池田市教育委員を5期務めるなど広く社会活動にも尽力、貢献した。


*21世紀へ夢託し華頂の火
12月31日、浄土宗総本山知恩院(中村康隆門跡)では、法然上人800年大遠忌お待ちうけの行事として大晦日のこの日、多彩な燈火で山内全域を飾るイベント「夢21世紀華頂の火」を行った。


☆平山郁夫画伯の大壁画完成 薬師寺
12月31日、文化勲章受賞者の平山郁夫画伯のライフワークともいえる法相宗大本山薬師寺(松久保秀胤貫主)の玄裝三藏院大唐西域壁画殿内に奉納する「大唐西域記」をテーマにした障壁画が遂に完成した。この壁画は高さ2.2m、長さ49mの大作で、21世紀の幕開けとなる1月1日午前零時に落款を入れ完成した。この模様は、NHKの『ゆく年、くる年』で実況中継された。


☆浄土宗 21世紀劈頭宣言発表
浄土宗(水谷幸正宗務長)は、21世紀を迎えるにあたり、『浄土宗21世紀劈頭(へきとう)宣言』を宗報や機関紙、ホームページなどで一斉に発表し、教団の方向性を明らかにした。この『宣言』では、宗祖法然上人の思想に迫りながら「共生(ともいき)」や「愚者の自覚」を訴えている。


☆佼成会「一食平和基金」約5億円の運用計画
立正佼成会(酒井教雄理事長)の一食平和基金は、平成12年度の運用計画をまとめた。アフリカへ毛布を送る運動や旧ユーゴ復興支援、また、IARFWCRP、国連への支援助成などで総額4億9900万円が決まった。


☆現地で理解を深めるアジアボランティアセンター 
アジアの持続的発展のために人材養成や派遣を行う同センター(通称AVC:平田哲代表)は年末年始にスタディーツアーを開催。「インド・スタディーツアー」ではインド身体障害児たちの家を訪問。「バングラデシュ・スタディーツアー」では女性の自立を支援するNGOやチッタゴン丘陵地帯に住む少数山岳民族の支援を行うNGOを訪ねた。「ネパール・スタディーツアー」では現地NGOが展開する教育、福祉、農村開発など幅広い活動に触れるなどして、NGO活動を考える。


*「救世軍」にモスクワの冬将軍厳しく
米国に本部を有するプロテスタントの一派の「救世軍」がモスクワからの撤退を迫られている。モスクワでは、12月末で宗教団体の登録が締め切られたが、救世軍については、モスクワ市当局筋は、救世軍が軍隊組織であることを理由に登録を認めなかったもの。現在、救世軍をロシアの全国組織として登録する意向であり、それが認められればモスクワでの活動再開への道も開けるものと期待している。


☆ホームページで聖職者を募集
アイオワ州デモインのカトリック司教区が教職者の求人サイトを開設、連絡先や祈りのコーナー、聖職者の証言集などが掲載されている。


☆イスラム過激派ハッカーがイスラエルのサイト攻撃
イスラエルのインターネット・サイトがイスラム過激派ハッカーから攻撃を受け、ホームページが書き換えられるなどの被害が出ている。これに対し「イスラエルのハッカーが団結して防衛を宣言した」と『エルサレム・ポスト』紙が報じている。


☆インドネシア宗教対立 "和平"に向け対話始まる
インドネシア東部マラク州の州都アンボンで、地元のイスラム教とキリスト教代表らと会談したロバート・ポラード米国総領事は「不公正な報道がイスラム社会の反発を煽っている」と指摘し、また、当事者同士の無条件宗教間対話の重要性を強調した。


*省庁横断の"カルト"対策を
警察・法務・厚生三省庁合同の「特定集団からの離脱者に対する精神医学的・心理学的支援の在り方についての研究会」がこのほど報告書をまとめ、フランスと同様な「省庁横断的な規模」の「カルト対策を統括する組織」や研究センターなどの設置を提案。信仰の問題に行政が積極的に取り組む方向性を指し示しており、信仰の自由・政教分離という憲法原理との調整が微妙になってきている。


☆「ルター神学はファーストフード文化と同じ」と論争
イタリアのピサの神学校で教父学を教えるカトリック神学者のマシモ・サラニ氏が「ルターの神学は米国のファーストフード文化と同じ」と発言したことに対し、ローマのルーテル教会牧師が反論し、論争が繰り広げられている。


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