三宅代表が国連ミレニアム宗教サミットに出席 (8月28〜31日)

9月上旬に世界各国の首脳を集めて国連本部で開催される「ミレニアム世界平和サミット」に対して、世界中の宗教指導者から21世紀の世界人類への提言を行うための世界会議が、9月28〜31日に、ニューヨークの国連本部総会議場ならびにアストリアホテルを会場に開催され、世界各国から1000名近い宗教指導者が国連に招かれている。

日本からは、久邇邦昭(伊勢)神宮大宮司・渡邊惠進天台座主をはじめ、神道界・伝統仏教界を中心に約30人の宗教指導者が招かれているが、わがレルネット社の三宅善信代表もその中に正式代表のひとりとして参加している。NGO関連を中心に、これまで海外での国際会議に70回以上出席した経験を持つ三宅代表であるが、今回は、三宅代表の父で、WCRP(世界宗教者平和会議)名誉会長・人類共栄会会長でもある三宅龍雄師の名代として招待を受けたもの。



国連本部総会場に立つ三宅代表


18歳の時に、時のローマ教皇パウロ6世に謁見したのを皮切りに、世界の主要な宗教指導者にはほとんど会見した経験を持つ三宅代表の活躍の様子は、今後、レルネットのサイトで紹介してゆく。
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国連ミレニアム宗教サミット現地レポート

9月に開催される国連ミレニアム世界平和サミットに先駆けて、8月28日から31日の日程で、同宗教者サミットが国連本部ならびに市内のホテル(ウォルドルフ・アストリア・ホテル)を会場に開催され、各国から千名を超す宗教家が一同に会し、21世紀に向けて各国の指導者に提言する会議を行なった。同会議への日本からの正式参加者は、久邇邦昭(伊勢)神宮大宮司や渡邊恵進天台座主や深田充啓日本宗教連盟理事長(円応教教主)ら27名であり、レルネットの三宅善信代表も、父のWCRP(世界宗教者平和会議)国際名誉会長の三宅龍雄師(金光教泉尾教会長)の名代として、正式代表に含まれている。



開会式での和太鼓のパフォーマンス


▼千人の宗教家が国連本部に大集合 (8月28日)

8月28日午後4時(米国東部標準時)、国際政治の殿堂、ニューヨークの国際連合本部総会場を色とりどりの法衣を身に纏った1000名を超す世界の宗教指導者が埋め尽くした。会場を揺るがす和太鼓の大音声と共に画期的な宗教サミットが幕を開けた。力強い和太鼓のビートは、単なる文化的パフォーマンスを超えて、これからここで起こるであろうことの予感と感動を参加者に分かち合った。

続いて、この宗教サミットの提唱者であり、事務局長を務めるバワ・ジャイン氏が、世界各国からの参加者に歓迎の
挨拶を行なった。この日の開会式は、諸宗教の代表者による会議に相応しく祈りで始まった。最初に、ヒンズー僧に
よる「シャンティ・マントラ(平和の呪文)唱題」に続いて、「平和の祈り」が行ったのは、次の各師である。

タイ上座部仏教のS.P.プッタコサチャン副管長、イスラエルの首座ラビのI.M.ラウ師、シリアのグランドムフティ(イスラム教最高指導者)のS.A.クフタロ師、バチカン諸宗教対話評議会長官のF.アリンゼ枢機卿、アルメニア正教会のカレキン2世総主教、神道代表の久邇邦昭神宮大宮司、ヒンズー教の指導者M.A.デヴィ師、世界イスラム連盟のA.オバイド事務総長、WCC(世界教会協議会)のK.ライザー事務総長、ジャイナ教ヴェラヤタン研究所長のA.チャンダナジ師、ゾロアスアー教のF.コトワル師、チベット仏教ゲルグパ派のR.リンポチェ師、アフリカ民俗宗教のM.ノコズラ師、韓国民俗宗教のイ・センヘン師、中国道教協会のミン・ツィチン主席、日本仏教代表の渡邊恵進天台座主、ユダヤ教タルムード(聖典)学者のA.シュタインザルツ師、アメリカ先住民のA.シェネンドラ師、シーク教のJ.M.シン師、アッシジの聖フランシスコ教会のM.ミッチ神父、韓国仏教のジョン・ウンデク師、イスラム教のS.Z.アベディン師、ブラマクマリ教大学総長のD.ジャンキ師、ユダヤ教ロシア首座ラビのA.S.シャエヴィッチ師、英国ギリシャ正教のG.テロカロウス大主教、バハイ教のA.リンカーン事務総長、ヒンズー教のS.W.サラスワチ師、キリスト教チャウタカ研究所長のJ.B.キャンベル師、ミャンマー仏教のB.クマラ師、ヒンズー教のD.J.P.ヴァスワニ師、ユダヤ教のA.シュナイヤー師、アビシニア・バプテスト教会のC.バッツ師らが、次々と登壇し、それぞれの伝統に則って、「平和の祈り」を行なった。



渡邊惠進天台座主による「平和の祈り」

この日の夜は、国連本部のダイニングルーム(公式のレセプションが行われる会場)で、歓迎のレセプションが行われ、約300名の正式代表の宗教指導者たちが、顔見知りの人は再会を喜び合い、また、新しい知己を得る機会となった。通常、国際会議では、会期中、連日連夜レセプションが行われ、こうした非公式での情報交換は、それぞれの教団の公式見解とは異なった本音の話が聞け、お互いの信頼情勢にとっては、非常に重要な機会であるが、とかく日本の宗教指導者(たぶん、政治家や経済人も同じ)公式な席での祈りのパフォーマンスや発表に重きをおいて、レセプションにあまり参加しないことが多いのが嘆かれる。


▼アナン国連事務総長の登場

サミット第二日も国連本部総会議場で開催された。この日は、ナイジェリアの民族音楽のドラム演奏で幕が開けた。正面に議長席には、コフィ・アナン国連事務総長、今サミットのパトロンでCNNテレビのオーナーのテッド・ターナー氏、そして今サミットの提唱者のバワ・ジャイン事務局長の三氏が並んだ。


アナン国連事務総長 
この日は、ボスニアのイスラム教最高指導者と南アフリカケープタウンの大主教の祈祷で始まった。ジャイン事務局長の挨拶に続いて、大きな拍手と共に、アナン国連事務総長が講演席に経った。ちょうど、今週号の『タイム』誌のカバーを「信仰の人コフィ・アナン」と題して飾ったアナン事務総長が、「そもそも国連とは、主権国家の連合体であり、政教分離が国連の原則であるが、そのことはいささかも宗教者の役割を軽視するものではないどころか、私は、世界の諸問題に対する宗教者の積極的な関わりに期待している」と述べ、さらに、「宗教には世を照らす光の面があるのと同時に、暗い面があることも事実である。暗い面とは、女性や弱者への差別を助長してきたこと。極端なナショナリズムへの荷担。さまざまな社会的問題への無関心である。宗教者は、変化への媒介者とならねばならず、世界を分裂させるのではなく、和解と統合の推進者となるべきである」と述べ、一堂に会した宗教指導者たしから大きな喝采を浴びた。



総会場でWCCのウコー諸宗教対話局長と隣席する三宅代表 

続いて、『対話への呼びかけ』と題して、全体会議の第1セッションが始まった。議長は、レルネット三宅代表とは30年来家族ぐるみの付き合いをしているインドの上院議員で、TOU(理解の殿堂)の委員長でもあるカラン・シン博士である。シン博士の家系は、父の代までカシミール州とジャミール州(パキスタン国境地帯。日本よりも面積が広い)のマハラジャをしていた名門であり、18歳で国会議員に当選して以来、閣僚や駐米大使の要職を歴任したのと同時に、宗教の相互理解を通した世界平和の促進運動や、野生生物の保護活動など広範囲な国際的活動で知られている。




講演者:バチカンのアリンゼ長官と議長:カラン・シン博士

第1セッションの発題者としては、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世の名代として、バチカン諸宗教対話評議会の長官フランシス・アリンゼ枢機卿、世界イスラム連盟の A・アル=オバイド事務総長、ユダヤ教のイスラエル首座ラビのメイル・ラウ師、神宮大宮司の久邇邦昭師、WCC(世界教会協議会)事務総長のK・ライザー博士、ジャイナ教のL.M.シンビ博士、台湾仏教界のシェン・エン大師、ヒンズー教指導者のスワミ・ジ・マハラジ師らが発題を行なった。なかでも、伊勢神宮の大宮司という神社神道界の最高位の神職であるにもかかわらず、奉職する前は、ビジネスマンとして海外生活経験の長かった久邇邦昭神宮大宮司(久邇宮朝融元殿下の令息)は、流暢な英語で神道的価値観からみた対話へのあり方について発表を行ない、注目を集めた。


▼重要なCommunion(共食)

引き続き、今回のミレニアム宗教サミットのパトロンであるテッド・ターナー氏が登壇。ケーブルテレビニュースの草分け的存在CNNから始まって、タイム(出版社)ワーナー(映画会社)グループまで傘下に収めた「メディア王」らしく、大きなアクションと解りやすい口調で、「宗教者の平和活動に、経済人も積極的に協力すべきだ」と持ち上げて、盛んな拍手を浴びていたが、正直なところ、リッピサービスと比べて話の中身(理念・哲学)が弱いところがどこかの国の総理大臣と共通しているように感じられた。特に、各国の人種や宗教・文化の融和についての件では、「白熊でも黒熊でも、棲息している地域が違うだけだ。熊は熊に変わりない」などという乱暴な表現に唖然とした。もちろん、数分間のスピーチを聞いただけで、その人の全人格を評価するのには無理があるが、こういう人物が、時代の潮流に乗って「メディア王」として君臨していること自体、現代世界の「危うさ」が現れているのではないだろうか。



昼食のテーブルを囲んで、左からマハトマ・ガンジー翁の孫エラ・ガンジー女史、バチカン諸宗教対話評議会のアリンゼ長官、アナン国連事務総長、世界イスラム連盟のオアル=オバイド事務総長

また、アナン国連事務総長の招待による昼食会が催され、正式代表の宗教者たちが席を同じくして交流を深め合った。「たかが一度の食事」と思われる向きもあろうかと思うが、異なった文化的伝統や宗教的背景を持つ者同士が食卓を共にするということは、文字通り「communion(共食)」であり、「communication(意志疎通)」や「community(共同体)」を行うための有効な手段であり、それ故、人は、結婚式や葬儀といった人生上の重要な通過儀礼においても、「communion」を行い、お互いの人間関係を確認し合うのである。

この日の午後には、『紛争回避のための宗教の役割』と題して、庭野日鑛立正佼成会会長が議長を務めて、全体会議の第二セッションが行われ、シリアのイスラム教最高位S・A・クフタロ師、渡邊惠進天台座主、ヒンズー教指導者のM・A・デヴィ師、ユダヤ教聖典学者のA・シュタインザルツ師、アメリカ先住民のW・アビンボラ師、中国カトリック協議会副主席のフ・ティシェン司教らが、発題者を行った。



講演者:渡邊惠進天台座主と議長:立庭野日鑛立正佼成会会長 

 夜には、H・キュング博士による「地球的責任に向けて」と題する記念講演が行われ、『地球憲章』のS・ロックフェラー起草委員長らが立ち会って、予めハーバード大学等の学者チームによって起草されていた今サミットにおける『地球憲章』の署名式が行われた。


▼個別のテーマを討議

サミット第3日と4日は、会場を国連本部からウォルドルフ・アストリア・ホテルに移して開催された。何ごとも「時間通り」に進行する日本人的感性がら言えば、お世辞にも効率的とは言えない混沌とした「インド的運営(参加者は皆「主体性の強い」宗教者であり、事務局の長がインド人のため)」によって、宗教サミットの議事進行は遅れに遅れ、国連総会議場で開催されることになっていた全体会議第3セッションの『許しと和解に向けて』(議長は、南アフリカの正義と和解委員会のD・チリ氏)と、第4セッションの『貧困と環境の悪化の脅威の終結』(議長は、ILO事務局長のJ・ソマビア氏)が行われた。これらの日程の間にも、それぞれの参加者による「祈り」が延々と繰り返され、その都度、「会議」が中断した。



第4セッションの参加する三宅代表

第1回のワーキングセッションとしては、1) 紛争の回避:バルカン半島、2) 許しと和解:地球的課題と地域主体性、3) 貧困:この問題に世界はどう取り組むべきか? 4) 環境:危機の範囲と宗教の責任、がそれぞれ話し合われた。また、第2回のワーキングセッションとしては、1) 紛争回避:ロシアと中央アジア、2) 許しと和解:中東、3) 貧困:宗教団体による貧困対策の再活性化、4) 環境:先住民の応答による地球管理委員会、5) 効果的な対話を創り出すこと、が話し合われた。第3回のワーキングセッションとしては、1) 紛争から和解へ:エチオピアとエリトリア、スーダン、ナイジェリア、2) 紛争の回避:シエラレオネ、3) 貧困と対策への必要性:宗教対話に世俗の団体の参加を、4) 環境:持続可能な将来を目指す宗教的展望。特に、最後の部会において、黒住宗道黒住教教嗣がパネリストとして教派神道の立場から意見を表明した。また、宗教的生活共同体である「一燈園」の西田多戈止当番(代表)が、「地球感謝の日」を全世界の国々でこれを「祝日」として制定し、意識を高めることを提案し、注目された。5) 霊的律法と自然法と一体化する地球とその住民の再生、6) ビジネス円卓会議:緊密化する地球社会、が話し合われた。

8月31日の夕刻、予定時刻を4時間も遅れて閉会セレモニーが行われた。ここでも、ヒンズー教のグルたちを中心に数多くの宗教代表が延々と意見表明や祈りを行った(しかも、多くはヒンディー語やサンスクリット語のマントラなので、何を言っているのかサッパリ解らない)後、宗教サミットの参加者たちによって、世界各地から持ち寄られた「聖なる水(ご神水)」がひとつの鉢に注ぎ込まれて、霊的一体感が高まり、宣言文が採択されて、4日間にわたる画期的な宗教者によるミレニアム世界平和サミットが閉幕した。


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