アメリカという世界を不幸にするシステム
01年10月27日


レルネット主幹 三宅善信

▼アメリカの逆襲

 アメリカによるアフガニスタンへの軍事侵攻が始まって3週間が経過した。その間、私もいろいろと本件について取り上げてきたが、去る10月21日から24日まで、ニューヨークの国連関連施設を使って行なわれた今回の9月11日の同時多発テロおよび、それ以後の国際情勢について緊急に招集された宗教者の会議に参加するため、第2のテロの危険や炭疽(たんそ)菌騒動に揺れるニューヨークに滞在し、昨晩、無事帰国した。会議は、当事者であるイスラム教、ユダヤ教、キリスト教からの代表を中心に、ヒンズー教、仏教、シーク教、バハイ教、ゾロアスター教といった他の宗教の指導者も加わり、2人の国連事務次長とアメリカやパキスタンやなノルウェイ(ノーベル平和賞を出している国)の国連大使等も加わって、熱心に討議が行われた。



世界イスラム機構のM・ラマニ国連大使と筆者

 討議そのものの内容については、いずれ違う機会で触れるつもりであるが、その間、ニューヨーク(国連プラザ)滞在中に、現地で流されているテレビの画面を視る機会がしばしばあった。驚いたことに、ニュース専門のチャンネルはどの局も、番組放送中ずっと、テレビ画面の下部に帯状のテロップが流されており、そこにはなんと、"America Strikes Back(アメリカの逆襲)"という字が四六時中映し出されていた。

 今回のアメリカ側の表現を使えば、9月11日に始まる一連の事件は、思わぬ様相を呈ししつつある。事件が発生した直後(十分な捜査もしないうち)から、ブッシュ大統領は、"首謀者"と名指ししたオサマ・ビン・ラディン氏を「逮捕して、法廷の場へ引き摺り出し、"法の裁き"を受けさせる」と宣言したが、その後すぐに「ビン・ラディンが生きていようが生きていまいが目の前に連れてくる」というふうに、事実上の暗殺指令となった。最初は、彼を捕縛するために「限定的な軍事行動をする」と言っていたのに、アフガニスタンに対する昨今のアメリカの攻撃は、タリバンやアルカイダのものと目される軍事施設だけでなく、多くの民間人も巻き込み、また、国際赤十字社(註:International Red Cross。イスラム教国である現地では「赤新月社=Red Crescent」)や国連の難民救援関係のNGOの施設にすら、"誤爆"を繰り返している。赤十字の食糧倉庫を"誤爆"した後、国際赤十字社から厳重抗議を受けたにも関わらず、そして国際赤十字社は、同施設の屋上にパイロットからも一目で判るように、大きな赤十字のマーク(まさかこれをターゲットのXマークを勘違いしたのでもあるまい)を書いて、施設の正確な位置をアメリカ軍に通達したにも関わらず、再び国際赤十字の施設が米軍による空爆を受け、大きな被害が出た。いったい誰が責任を取るつもりなのか?



画面下には常に"America Strikes Back"の文字が

▼戦争継続が真の目的

  これらのことはどう考えても、アメリカが、ビン・ラディン氏を捕まえるということを究極的な目的にしていないことを証明しているようなものである。はっきり言おう。アメリカの真の目的は、大規模な"戦争"を行うことによって、傾きかけたアメリカの景気を回復させるために、国際的に最も競争力を有している産業のひとつである軍需産業を梃入れすることにあるのである。したがって、今回の戦争がごく短期間で終わってもらっては困るのである。事実、ここ数日の間に、アメリカの次期主力戦闘攻撃機が、アメリカ軍や外国の軍隊から3,000機もの大量発注を受けている。最新鋭の戦闘機は1機100億円くらいはするから、3,000機の発注を受けるということは、それだけで30兆円分の経済刺激効果があるというわけである。

  アメリカが戦争を長引かせようとしている例をお知らせしよう。ことは、10月7日に遡る。アメリカによるアフガニスタンへの軍事攻撃が開始された早々に流れてきたニュースを皆さん記憶しておられるであろう。それは、アメリカ軍のテレビカメラ付無人偵察機プレデタ−(超低空をゆっくり飛行できる)が、護衛の装甲車に守られて乗用車で移動中のタリバン政権最高指導者オマル師一行の姿を映していたということである。そのニュースには、「現地の司令官が攻撃命令を出さなかったために、まんまとオマル師に逃げられてしまった。後でその報告を受けたラムズフェルド国防長官が激怒した」というニュースであったが、このニュースとて真偽の程は怪しいものである。

  湾岸戦争の時に、イラク軍によって占領されたクウェートからいのちからがら逃げ出した少女が、「イラク兵がクウェートで赤ん坊を虐殺している」とアメリカ連邦議会で証言し、そのことがアメリカ国民の反イラク感情を結束させる原動力になったということがあったが、その少女というのは、実は、ワシントンD.C.で暮していたクウェートの駐米大使の娘で、全てアメリカ国民を戦争へと駆り立てるためのでっち上げ芝居だった、ということが後になって判明した。あるいは、イラク軍の攻撃によって破壊された油田から流出した原油によって、油まみれになった水鳥という映像も皆さんの記憶に残っているだろうが、あれもとかく「反戦」運動と繋がりやすい環境保護活動家たちを黙らせるためのでっち上げの映像だったということが後程、判明した。



「Wanted(お尋ね者)」の張り紙を見るユダヤ人」

 同様に、今回のアメリカのアフガニスタンに対する軍事攻撃(の成果報告)、あるいは、反タリバン・反アルカイダキャンペーンは、これらの前科から見ても、ほとんど「でっち上げ」であるという可能性が大きい。「でっち上げ」という言葉が適切でないなら、戦争遂行に対する国民の指示を得続けるための情報操作(メディア操作)という言い方をしてもいい。その映像をそのまま鵜呑みにして垂流しにしている日本のマスコミは論外である。「大本営発表」という言葉が「メディア操作」と同義語になって、半世紀たったこの国で、未だに自分の国ならぬ外国政府の発表をそのまま信じるなんて愚の骨頂である。「ペンタゴン発表(でっち上げ)」という言葉を辞書に加えるべきである。

 先の「偵察機がオマル師を発見したが、逃げられてしまった」というニュースも怪しいものだ。裏読みすれば実際、オマル師を発見していたのであろう。オマル師を発見していたのなら、その座標にターゲットオンして、巡航ミサイルの発射ボタンさえ押せば、開戦初日にオマル師一行を爆殺することなど、わけもなくできたはずである。しかし、アフガン攻撃の初日早々に最高指導者オマル師が死亡し、オマル師の庇護を受けているといわれている敵役ビン・ラディン氏がアフガニスタン国外に逃亡して(追放されて)しまったのでは、"戦争"にならない。この場合の"戦争"というのは、アメリカの武器の在庫を一掃するためという意味の"戦争"である。そこで、わざとオマル師一行を見逃がし、あるいは、見つけられないふりをしながら、"戦争"を長引かせ、一発数千万円はするという巡航ミサイルを、毎日何十発と使い、さらに、アメリカ国民が厭戦気分に陥ることを避けるために、次々と"情報"を意図的に流しているのである。そもそも「費用対効果」の観点からも、ゼロ戦が敵艦にカミカゼ攻撃するのは、ある意味で「採算」が取れるかもしれないが、一発数千万円の巡行ミサイルで、数十万円のテントや数百万円の車輌を破壊したところで、撃てば撃つほど「損」になるはずである。


▼炭疽菌事件はアメリカ人の仕業?

 ひょっとすると、今回の炭疽菌騒動も当局の「でっち上げ」かもしれない。少なくとも、タリバンの仕業に見せかけた第三者の犯行の可能性も高い。考えてみるがいい。あのような細菌兵器(炭疽菌)を、飛び散り易いように乾燥した粉末に加工するには、そこそこの知識と技術と設備が必要である。しかし、どう見ても、荒野でテント暮らしの生活をしているゲリラがあのような高度に加工された生物兵器を合成できると思えない。タリバン自体が埃まみれの生活をしているのに…である。アメリカで、しかも国家安全保障にとって、まったく重要とは思えない何百万人もいるだろう公務員のひとつである郵便局員を何人か犠牲にすることによって、目的が達成されるのなら、国家権力はそれくらいやりかねない(『X-Files』を始め、映画などによくあるテーマだ)。アメリカ国民の目からみれば、雲上人であるホワイトハウスの高官や上院議員よりも、自分たちが毎日身近に接している郵便局員の方が事件に巻き込まれたほうが遥かにシンパシイを得ることができる。この郵便局員を犠牲にすることによって、アメリカ国民の対タリバン戦争への意欲をそそるという作戦は、ひょっとするとCIA辺りがでっち上げた可能性すらある。



問題の手紙

 あの炭疽菌入の郵便物を送り付けられたというダシュル上院議員宛ての手紙をよく見るといい。「Death to America(アメリカに死を)」と書いてあるではないか。この危機管理が叫ばれている時期に、わざわざ「アメリカに死を」等と書かれた郵便物を共和党の上院の院内総務のスタッフが議員に手渡したりするであろうか。手紙には、次のように書かれてある。「09-11-01 THIS IS NEXT TAKE PENACILIN NOW DEATH TO AMERICA DEATH TO ISRAEL ALLAH IS GREAT (2001年9月11日付 次はお前の番だ。今すぐ(抗生物質)ペニシリンを用意しろ。アメリカに死を! イスラエルに死を! 神は偉大なり)」。いかにもイスラム原理主義者が、アメリカおよびイスラエルを敵視して書いたようにしつらえてある。

 しかし、私は、かえってここに胡散臭さを感じる。今回、私はニューヨークで「9.11(September 11)」という合言葉を何度も聞いた。しかし、日付の書き方で9月11日を表そうとする時、09-11-01と書くのはアメリカ人だけである。日本人なら01-09-11と書くし、欧州やその植民地であった中東・アジアの人なら11-09-01と書くはずである。イスラム暦なら、この日は、1422年6月22日に該当する。つまり、あの強迫状は、イスラム原理主義者の仕事に見せかけて、実はアメリカ人(当局か別の過激派かは判らないが)が書いたもの(でっち上げ)であることはほぼ間違いない。それを、アルカイダ(もしくはイラク)の仕業であるように世論操作しているのである。



抗生物質を飲んで、軍隊が警備するNY中央郵便局へ

▼「世界の警察」を僭称するアメリカ

  それに、ニューヨークで視たテレビでは、連日、ドイツ軍や日本軍との戦争の映像を何度も流し、これまでアメリカが行ってきた戦争は全て正義であったかのような印象を国民に与えようとしている(なぜかベトナム戦争ものは放映されない)。日本軍に対する叙述など酷いものである。「日本の兵隊は米と水と野菜しか食わされずに戦争をしていた(貧しかった)」とか…。兵隊に限らず、当時の日本人は、ご飯と野菜で生活していたのである。肉なんて初めからほとんど食べていない。悪意のプロパガンダ以外の何ものでもない。その証拠に、食生活がアメリカに近いドイツ軍への陳述では、この点が触れられていない。そして、戦争で傷ついて帰還した兵隊には、何の恩給も与えられず、戦死した兵隊の家族には手厚い恩給が国から与えられるため、兵士たちは喜んでカミカゼ攻撃をしたというのである。そして、今回のテロは、「まさにカミカゼだ」というのである。そのような主旨の番組が米国内では流されていた。神風特攻隊で散っていった兵隊のうち、一人でも家族が恩給を貰えるためというような馬鹿げた目的で尊いいのちを捧げた兵隊など一人もいないに決まっているではないか!



悪意に満ちた反日プロパガンダ番組

 そもそもアメリカは、第ニ次大戦後、十年おきくらいに大きな戦士を何度も行ってきた。しかも、その全てが外地での戦争で、別にアメリカの国家としての独立が脅かされたわけ(自衛のための戦争)でもなく、全く合衆国の一般市民生活に痛みを伴わない形で、言わば「景気刺激策としての戦争」を行ってきたのである。1950年の朝鮮戦争しかり、62年のキューバ危機、64年以後10年近く続いたベトナム戦争、そして4次にわって闘われた中東戦争。あるいは米ソの両超大国による「冷戦」という名の核軍拡。そして、冷戦終結後は、「パナマの悪逆な指導者ノリエガ将軍を逮捕する」という、仮にも一国の元首であるノリエガ将軍を米国が逮捕するという国際法を無視した論理(ユーゴスラビアのミロシェビッチ大統領に対しても同じ論理だった)でパナマに侵攻したが、本当の理由は、パナマ運河に対するアメリカの権益を守るということであった。そして、忘れもしない91年の湾岸戦争、99年のコソボへの空爆というように、なんのかんの有り難いお題目は唱えていても、実は、常に武器の在庫を一掃するための戦争が行われ続けてきた。

  湾岸戦争の戦後処理も酷いものである。勝手にイラク国内の北緯36°線以北と32°線以南を、「イラク軍機が飛行してはいけない地域」に指定し、ある外国によって自分の国の領空を自由に飛行機を飛ばされなくされているのである(そんな馬鹿げたことはない)。それぞれ、北方の少数民族クルド人を守るためとか、南方に隣接するクウェートを守るためなどというもっともな理由をつけて、イラクの飛行機が自国の領域を自由に飛ぶことを勝手に禁止しておいて、その禁則を破ったから、あるいは、その区域を飛ぶ米軍機にイラクがレーダーの照準を合わせたから、と勝手に決め付けて、湾岸戦争終了後も3年に1度くらいは、独立国であるイラクの施設を空爆してきた。こんな権利、いつ誰がアメリカに与えたというのだ!


▼悪質なアメリカ教の宣教師

  これらは全て、米国の軍事産業を保護・育成するためである。アメリカという国は、その建国以来、戦争を前提に成立っている国なのである。今から225年前(1776年)独立戦争に始まって、武力を持って闘うということが"正義"として認められている国なのである。その証拠に、これほど銃犯罪が多いにもかかわらず、国民が自由に銃器を所有することを重要な権利として認めているではないか。それでも、モンロー主義(欧州での戦争にアメリカは関わらないという政策)を通っていた19世紀の間はましであったが、「フロンティア」が消滅し、合衆国の領土が西海岸に到達し、1898年の米西戦争でスペインと戦い、現在のフロリダ半島、そしてキューバ諸島、太平洋ではフィリピン・グアム等をスペインから獲得して以来のアメリカというのは、一転して中南米やアジアへの膨張政策へと転換した。

  20世紀のアメリカは、まさしく、膨張政策を正当化する世界の警察として、世界に不偏的な原理であるアメリカ的民主主義を広宣流布するという、言わば宗教的なミッションを帯びた神聖国家として自己肯定し、このことを他国の伝統文化や風習、民俗を無視して奔放に押しつけてきた国がアメリカである。しかも、軍事産業と政治とが密接に結びつき、自らの国で武器を使うだけでなく、「死の商人」として、世界各地で内戦を誘発し、その両者に対して兵器を供与するという形で武器を輸出し、戦争を永遠に繰り返させることによって、アメリカの軍産複合経済を育成してきたのである。

  このような国が、国連安保理の常任理事国として平和のために戦争を抑止するなどということは、考えることもできない。つまり、この地球上にアメリカ合衆国という自己増殖を目的とする癌細胞のような国が存在するかぎり、世界の多くの国は、この国の犠牲になって、多くの民族、多くの文化が喰いものにされていくということである。読者の皆さんは、アメリカという国の潜在的危険性についてどのように考えておられるのであろうか? しかも、アメリカの巧妙なところは、世界中のどんな国でも、やりようによっては「アメリカのような立派な国になれますよ」という間違った幻想を世界の人々に擁かせながら、その実、他国を喰いものにするこのような行為を行っているところである。これがもし日本ならば、どう考えても、世界中の国が日本のような国になれるはずがないし、なろうとも思わないであろう。

  しかし、アメリカが説く、アメリカ的価値、生活様式というのは、世界中のあらゆる民族が、実現することが可能であろうかの如く印象を与えるという点では、より悪質である。しかし、実際は、そうなってもらってはアメリカ自身のメリットが無くなる訳で、言わば痩身グッズのコマーシャルのように、何らかの効果があるように見せながら、次々と新商品を買わせていき、またお互いに消費させていくという大きなシステムでもって世界中の人々を喰いものにしているのである。まさに、アメリカという世界を不幸にするシステムである。


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