北朝鮮ウルトラ救済計画
 
    03年04月16日


レルネット主幹 三宅善信

▼援助交際しかできない日本外交 

 「北朝鮮の核開発問題について話し合う多国間協議が、アメリカ・北朝鮮・中国の3カ国によって北京で開催されることが決まった」と、本日(2003年4月16日)、米国政府が発表した。今年1月の『NPT(核拡散防止条約)脱退宣言』以来、いわゆる「瀬戸際外交」によって、国際社会に脅しをかけた(つもり)の北朝鮮は、あっという間にイラクのフセイン政権を崩壊させたアメリカの圧倒的軍事力を目の当たりにして、大きな外交的転換点を迎えることとなった(註:実は「イラク戦争は案外てこずる」と読んでいたロシア当局も、情報収拾ならびに分析能力のなさにショックを受けたらしい)

 昨年の秋、北朝鮮政府は、クリントン政権時代に結んだ核開発停止についての『米朝合意』を実際には遵守せずに、「密かに核開発計画を進めてきた」と、自ら国際社会に宣言したのである。何をしでかすか判らない「ならず者」国家である北朝鮮が、核保有国になるは、まさに「き○がいに刀物」状態である。これを阻止するために、日米韓の3カ国は、1993年に『KEDO(朝鮮半島エネルギー機構)』の枠組みを作り、核兵器製造への転用が難しい加圧水型軽水炉(PWR)を北朝鮮に提供し、「電力不足」という見えすいた理由で、これまで北朝鮮が開発してきたプルトニウムの抽出がより容易な黒鉛減速炉から、欧米型の軽水炉に切り替えることを支援(日韓が建設技術と資金を提供)し、その間、不足する北朝鮮の電力エネルギーを補うために、米国が火力発電に使う重油を無償で提供するという支援を行なってきた。

 そのような支援を受ける前提条件として、「北朝鮮は核開発を即時放棄する」ということであったが、実際には、北朝鮮政府は、KEDOの枠組みによる重油の無償供給や軽水炉建設援助という「おいしいところ」のみをタダ取りながら、裏で密かに、核兵器やミサイルの開発を進めていたのである。国際的な背信行為であることはいうまでもない。もちろん、北朝鮮は「なんでもあり」のならず者国家であるから、それ以外にも、国家が(「スーパーK」と呼ばれる偽米ドル紙幣の製造(註:自国の紙幣を印刷する設備で、他国の紙幣も印刷してしまう)や覚醒剤を製造して、これを外国(主として、偽米ドル紙幣は欧州の金融市場でマネーロンダリングし、覚醒剤は日本で売りさばく)に密輸しているような国であるので、世界は常に、北朝鮮が「何をしでかすか」厳重に監視しておかなければならないのは言うまでもない。

 しかし、問題なのは、北朝鮮のこのような不誠実な態度が露見したのにも関わらず、毎度のことながら、いやらしい中年爺と同じ「援助交際」しか能のない日本政府(なかんずく外務省)は、北朝鮮に対してさらなる食糧支援や経済援助を与えること(これを「盗っ人に追い銭」という)によって、北朝鮮の態度を軟化させようとしているのには、拉致被害者家族の皆さん同様、開いた口が塞がらない。また、本件に関しては、「腰抜け」日本政府はある程度予想していたが、キム・デジュン(金大中)政権の後を受けた韓国のノ・ムヒョン(盧武鉉)政権まで、「太陽政策」という宥和策を引き継いだのは、意外だった。こんなことでは、日韓両国が多国間協議から外されるのは、いたしかたあるまい。

 北朝鮮の目論見では、瀬戸際外交を続けることによって、北朝鮮が核開発問題(註:本当は「国体護持」問題)で唯一の交渉相手だと思っているアメリカ政府を、米朝協議の交渉のテーブルに引き出そうとしてきたが、米国政府はこれには応ぜず、直接対話による二国間協議を拒否し、北朝鮮と米国の話し合いは、その入口である協議の枠組みを巡って平行線を辿ってきた。つまり、米国は「北朝鮮を対等な交渉相手とみなしていない」ということである。誰かが、北朝鮮の「後見人」として、北朝鮮の言説を担保させる国がないと交渉できない(註:仮に交渉によって約束が成立したとしても、どうせこれまでのように、約束を守らないから)と考えるに至ったのである。


▼明暗を分けた常任理事国

 しかし、その間に、国際情勢は激変した。フランス・ロシアという安保理の拒否権を有する常任理事国および、ドイツをはじめとする数多くの非常任理事国の反対にもかかわらず、米英両国は安保理決議を経ずして自分たちだけでイラクを攻撃し、長年の仇敵フセイン政権をあっという間に崩壊させてしまった。このことは、国際社会が、いかに国連という国際社会の総意を形成するための場で合意しようとしまいと、アメリカがやりたいことは実現し、しかも、このことに対して、国際社会が実質的には何も手を出せない(註:アメリカは国連決議違反のかどで制裁を受けるべき)ということが万民に明らかになってしまったという意味で、半世紀以上にわたって、第二次世界大戦後の国際秩序を維持してきた国際連合体制の崩壊の始まりを意味した。

 アメリカが、国連決議を無視してでも今回の対イラク戦争を始めるための大義名分として揚げ「大量破壊兵器の発見云々」についても、いざ戦争が終わってしまえば、まさに「勝てば官軍」で、実際に、イラクには大量破壊兵器がなかった(使わなかった)から、フセイン政権がアッサリと負けてしまった(註:それではアメリカの格好がつかないのだろうから、おそらくどこかで「化学兵器工場の跡」という動かぬ証拠をでっちあげるだろうけれど…)にもかかわらず、当初の大義名分をすり替えて、自らの軍事行動を正当化してしまったのである。

 今回のイラク戦争を巡る国際的な駆け引きの中で、「漁夫の利」を得たのは、なんといっても中国である。安保理の常任理事国が、米・英と仏・露の2対2に分れた時に、キャスティングボートを握る立場(註:もちろん、常任理事国にはたとえ1国だけでも拒否権があるが、拒否権が実際に行使されることは稀で、拒否権行使をカードにしつつも、できるだけ多数派工作を行うのが常である)であった中国は、「安保理決議を経ない武力行使には反対である」と、表面上は(註:私はあくまでイラクのことではなく、将来の台湾武力併合や朝鮮半島有事の際のアメリカ軍の介入の釘をさしただけであって、中国にとっては、イラクのフセイン政権が煮て食われようが焼いて食われようがどちらでもよいことであった)フランス・ロシアと同じことを言っていたが、仏+露+独の新三国枢軸には関わらず、それ以上はアメリカに対する異は唱えず、いわば、イラク攻撃を黙認することによって「ブッシュ政権に貸しを作った」形であった。そして、イラク戦争が事実上、アメリカの圧勝に終わった今日、この戦争に反立してきたフランスとロシアの面目は丸潰れである。ただからといって、米英両国に対して、イエスマンぶりだけを発揮した日本の国際的な位置付けが少しでも上昇したわけではなかったことは言うまでもない。


▼アメリカが中国を指名した

 さて、アメリカによる今回のイラク攻撃を見て「明日はわが身」として世界中で最も恐れたのは「北の将軍様」ことキム・ジョンイル(金正日)体制の北朝鮮であることは言うまでもない。北朝鮮はこれまで、何かにつけ「(朝鮮民主主義人民)共和国の交渉相手はアメリカだけだ」主張してきた(註:そのこと自体「国体護持の所領安堵を与えることができるのは米国だけである」と自己矛盾的に証明したようなものである)が、これに対してアメリカは、表立っては、北朝鮮を外交上の交渉相手として見なさない戦術をとってきた。次々とエスカレートする北朝鮮の瀬戸際外交戦術も無視し続け、その一方で「われわれは、軍事的におまえたちを制圧しようと思えば、いつでもいとも簡単にできる」と、イラク戦争で見せつけたのである。このブラフ(威し)に恐れをなした北朝鮮政府は、これまでの分不相応な要求をすべて取り下げ、一転して「国体護持」だけを目的とする(註:表面的には、それでは格好がつかないので、「米朝不可侵条約を締結すること」と主張しているが、実際は「金正日体制の保障」以外の何物でもない)3カ国協議に提唱してきたのである。

 そこで、北朝鮮としては、長年の友好国であり、今回のイラク戦争でも相対的に国際的地位を上げた中国に、いわば「後見人」となってもらい、「もし、アメリカが北朝鮮に軍事侵攻したら、(秘密のトンネルを通って)中朝国境まで逃げてゆき、豆満江(トマンガン)を渡って中国側からゲリラ戦術をすることができる」ということを見せつけることによって、これを担保にしてアメリカを交渉のテーブルに引きずり出すという戦略しか採れなかった(註:1950年の朝鮮戦争の際には、電撃作戦でソウルを火の海にして、いったんは半島の南端までを制圧した元抗日パルチザンの首領キム・イルソン(金日成)将軍率いる共産軍は、日本に駐留しているマッカーサー元帥率いる米軍の反撃(註:中でも有名なのはインチョン(仁川)上陸作戦だった)を受けるや否や、あっという間に朝鮮半島の最北部まで駆逐され、いのちからがら中朝国境地帯に逃げ込み(註:これが本当の白頭山の将軍様)、前の年に成立したばかりの中国人民解放軍の支援を得て、半島を南北に分断する38度線まで押し返して、やっと停戦にこぎつけたという歴史がある)。しかし、今回の3カ国協議への中国の参加は、実は、北朝鮮が望んだから実現したのではなく、アメリカが中国を(北朝鮮の宗主国と)認めたから実現したということを忘れてはならない。

 つまり、このことは、国際政治学的には、「北朝鮮の後見人(宗主国)は中国である」と北朝鮮が認めているのと同意であり、日本や韓国が期待していたような、南北当事者および米中日露というこの地域の安定に利害を持った6カ国による多国間協議にはならなかったのである。日韓両国が朝鮮半島の非核化に関わる多国間協議の当事者に加えてもらえるということは、敵方である北朝鮮や中国が毛頭考えていなかっただけでなく、日韓両国が後ろ盾として頼みにしていたアメリカですら、多国間協議の枠組みとしては、より範囲を拡大した「P5(安保理常任理事国)+北朝鮮・韓国・日本・オーストラリア・EUの5カ国による国際10カ国会議(5+5)」を考えていたとのことで、「蚊帳の外」に置かれた日韓両政府は面目が丸潰れとなった。小泉純一郎首相やノ・ムヒョン大統領も、表面上は「今回の米朝および中国による3カ国協議を多国間協議の入口として歓迎する。そして将来は日韓両国がこれに加わる」と版で押したような苦しいコメントを発表をしているが、国際的には、日韓両国がまったく相手にされていないことは明らかである。

 軍縮交渉を行なう時に、(もし交渉が決裂した際には)自ら戦う意志のない(場合によっては核兵器を使うことの覚悟ができていない)国が、そもそも同じ交渉のテーブルに着けるはずがないのである。残念ながら、自国民にいかなる犠牲が出たとしても、徹底的に相手を破壊し尽くすことのできる手段と意志を持っているもの同士が、「相互確証破壊(核抑止)」の原理に基づいてのみ、軍縮交渉というものは可能になるのであって、(「諸国民の正義と公正を信じる」といったような甘っちょろい)観念的な平和主義は、国際社会では何の役にも立たないことは明かである。


▼ 韓国が北朝鮮を併呑することは不可能

 今、仮に、北朝鮮のキム・ジョンイル体制が、かつての東欧社会主義諸国のように、その苛酷な人権抑圧と経済的苦境に不満を持つ国民の蜂起によって自己崩壊したとしても、「ベルリンの壁崩壊」後に西独(ドイツ連邦共和国)が東独(ドイツ民主共和国)を吸収合併したようなモデルでは、絶対に韓国は北朝鮮を吸収合併することはできない。なぜなら、1990年当時、アメリカ、日本に次いでGDP世界第3位の経済力を誇った西ドイツが、たとえ、資本主義体制諸国と比べれば経済的には劣るとはいえ、社会主義圏諸国の中では最も経済的に余裕があったと言われる東ドイツを吸収した、いわば「優等生同士の結婚」でも、西ドイツと東ドイツの経済格差(註:生産設備などのインフラだけでなく、生産性を高めるということに関する人々の意識や生活態度そのものに至るまでの決定的な違い)はあまりにも大きく、その後の大ドイツの経済的地盤沈下は、統一後13年を経た現在でも、その重荷から脱することができていないのが現実である。まさに「悪貨は良貨を駆逐する」という法則そのものである。

 いわんや、たかだか経済力(GDP)世界第12位程度(註:米国の約22分の1しかない)の韓国が、「社会主義のおちこぼれ」と言われる北朝鮮を吸収合併などしたら、両国ともに沈没してしまうことは目に見えている。しかも、韓国(4,600万人)と北朝鮮(2,400万人)との人口を合わせたところで、日本(1億2,700万人)の半分程度しかなく、国際的なマーケットとしても将来的に期待があまり持てない。また、イラクのように、これを征服すれば、世界第二の石油埋蔵量を誇る地下資源がわがものになるわけでもない。

 つまり、韓国には北朝鮮を経済的に救うだけの潜在能力はないし、また、仮にそのような連邦国家(これを「高麗=KOREA」と名付けたとしても)ができたところで、そのような国の誕生を喜ぶ者は、疲弊した北朝鮮人民以外には誰もいないのである。強いて言えば、韓国にいる教条主義的南北統一論者たちだけであるが、そのような民族主義的な高揚も、統一後数年を経て、統合併の負担で韓国人が経済的苦境に立たされれば、覚めてしまうだろう。「男女の仲」と同じで、「結婚するまでが花」で、いざ一緒に生活するようになると、「お互いの粗ばかりが見えて」くるようになるものである。

 しからば、仮にアメリカがイラクにしたように、北朝鮮を軍事的に解体したところで、石油資源といった具体的な実入りがあるわけでもなく、一文の得にもならない。逆に「餓えた人民」を食べさせてやらなければならないだけだ。しかも、一応、北朝鮮は中国やロシアと直接国境を接しているので、そんな地域で軍事作戦を行えば、えらく気を遣わなければならないところに、わざわざなんで自ら好んで手を出すはずがない。あえて、手を出すとしたら、戦争やその後の復興の「経費の一切を日本が持つ」と日本政府が事前に確約した場合ぐらいしか考えられないが、バブル経済絶頂の十数年前ならいざ知らず、自国の経済が破綻一歩手前の日本に、そのような余裕がないことは言うまでもない。


▼ 漢の武帝に学ぶ

 それでは、北朝鮮を取り巻く状況はすべて「お先真っ暗」かというと、実はそうではない。疲弊する北朝鮮を短期間で経済的に救う画期的な方法がただひとつだけある。この方法は、未だ誰も説いているのを聞いたことがないが、実はこれとよく似たモデルは実際にあった。それは、約2,100年前にこの地域で起こった歴史上の出来事を思い出せば良いのである。中国三千年(註:最近よく「中国四千年の歴史」という表現が使われるが、私は明確に継続性を持った中華文化としては「三千年」という表現のほうが正確だと思っている)の歴史の中で、最初の本格的な統一王朝であった漢帝国(その前に泰帝国があったが、泰は実質的には始皇帝一代のみの二十数年間で滅びてしまったので王朝とは言いがたい)が、その版図を最大にした第7代武帝の時代に、そのモデルを見出すことができるのである。

 武帝は、塩・酒・鉄等を専売制として国庫の収入を安定させ、儒教を官学化(註:もちろん、儒教を弾圧した泰帝国時代は言うまでもないが、漢初以来の「道家」主義を改め、儒教という支配者にとって都合の良い体制補完的な宗教を官学化することによって、その以後二千年間にわたる皇帝専制政治体制が、思想的にも儀礼的にも構築されたのである)を行ない、なおかつ、司馬遷による『史記』の編纂等、ありとあらゆる意味で中国式の皇帝専制政治の基礎を築いた時代である。

 武帝はまた、東西南北の四方に軍を派遣し、中華帝国の威を大いに広めた皇帝としても知られる。西域には張騫を派遣し、南方は現在の中越国境付近まで領土を拡げ、そして、始皇帝の時代以前から、たびたび中華民族を悩ましてきた(それゆえ万里の長城が築かれた)北方の騎馬民族匈奴を攻めて、これを撃退(註:この時、モンゴル平原を追われた匈奴が中央アジアへ進出し、玉突式にフン族が黒海地域へ押し出され、欧州におけるゲルマン民族の大移動をもたらしたとされている)し、空白となった満州地域から朝鮮半島北部へとその版図を拡げ、かつて燕の「将軍様」であった衛満が建てた国=衛氏朝鮮を滅ぼして楽浪郡という地方行政軍管区を設けたことによって、朝鮮半島の北部も大漢帝国の一地方となった。私は、この「楽浪郡方式」しか北朝鮮の餓えた人民を救う方法はないと考える。


▼ 21世紀の大国

 ここ数年来の中華人民共和国の経済的発展(註:これを快く思わない勢力がSARSウイルスをこの地域にばら撒いたという陰謀説があるくらいだ)には目を見張るものがあり、今では「世界の工場」と自他共に認める大国にのし上がってきた。そのことに伴い、国際的政治的発言力も日に日に増大してきた感がある。かつて、日本が第二次世界大戦の敗戦国であったにもかかわらず、また、白人のキリスト教国でもなかったにもかかわらず、「先進国クラブ(G7)に加盟させてもらえ、国際政治の枠組みの中でそれなりのプレゼンスを確保することができた唯一の理由は、とりもなおさず、そのズバ抜けた経済力のおかげであった。ただし、世界中でもまことに希有な、軍事力(というより戦う意志)を持たないこのアンバランスな大国は、その唯一誇れた経済力の崩壊によって、今では、世界中の誰からも顧みられない国に落ちぶれつつある。しかし、中国は違う。自ら核兵器を持ち、第二次世界大戦の戦勝国でもない(戦勝国は台湾にある中華民国であることは言うまでもない)にもかかわらず、国連の常任理事国のメンバーにいつの間にか入り込み、気がつけば、「21世紀の大国」となっていたのである。

「人類の5人に1人は中国人」という世界最大の人口と強力な軍事力(戦う意志)、そして、日の出の勢いの経済力…。G7諸国もこの世界最大のマーケットを視野に入れて行動しなければ、経済活動は成り立たなくなったのである。したがって、北朝鮮を救う唯一の方法は、朝鮮民主主義人民共和国を解体(註:もちろん「将軍様」には消えていただいて……。と言っても、マンスデ(万寿台)にある巨大な「首領様」のブロンズ像は、装甲車で引き倒すにも大きすぎて無理なので、「21世紀になっても、人民を餓えさせ人権を蹂躙していた人類の負の世界遺産」として永久保存して、観光名所として、貴重な外貨を稼がせる)して、中華人民共和国の一行政区(朝鮮省)となることである。

 そうすれば、13億の人民が暮らす世界一巨大なマーケットと一体化することになって、外部からも新たな投資を呼ぶこともできよう。そもそも中国東北部(旧満州)にある遼寧省・吉林省・黒竜江省を中心に、中国全体では約200万人の朝鮮系住民がおり、中でも吉林省の延辺朝鮮族自治区には約100万人の朝鮮系の人々が中華人民共和国の一人民として暮らしているのであるから、併呑する側、される側にとっても、それほど難しいことではなかろう。国号も朝鮮民主主義人民共和国の「朝鮮民主主義」を取り(どうせ民主主義じゃないんだから……)、「中華」を付け加えればいいだけである。もともと、彼らは自国のことを単に「共和国」としか呼んでいないから全く問題にはならないはずである。

 かつて、北東アジアの大国高句麗は、現在の中国遼寧省辺りからその国を興し、満州一帯をウロウロして勢力を蓄え、最終的に現在のピョンヤン辺りに都したのである。「北の将軍様」を神格化するために、半万年(五千年)の歴史を持つ(註:近代日本の創作物である「紀元2600年」に対抗して、「日本より2倍も古い」という朝鮮の歴史が近代になってデッチ上げられたのは言うまでもない)という白頭山(ペクトサン)の『壇君神話』を持ち出すまでもなく、現在の大韓民国とその版図がほとんど重なる新羅や百済は別として、高句麗の支配地域に住んでいた人々は、そもそも中国大陸の人々、すなわち渤海・金・遼・清・満州といった諸王朝と近しい関係にあったのである。これが現時点において北朝鮮を軍事的にも経済的にも救う唯一の方法であると私は思う。うかうかしていると、日本も大漢帝国の皇帝から金印を貰わないと国際的に認知されない国となってしまうかもしれない。


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