○●宗教法人と公的助成金について ●○ 


岐阜龍谷会事件初公判被告起訴事実を認める 10/7更新


三宅善信 7月6日 レルネット主幹

「政教分離(公権力による特定の宗教団体への弾圧や保護を禁ずるという意味であり、宗教団体が政治に関わってはいけないという意味ではない)」を国是とする(第二次大戦後の)わが国において、一時期、乱発された「玉串料訴訟」に代表される「靖国神社国家護持問題」や、「創価学会の政治(公権力行使)への過度の介入」といった特定教団に関わったイデオロジカルな問題ばかりがマスコミに採り上げられるなか、「公益法人」の一種である「宗教法人と公的助成金」の問題は、大多数の教団や一般の人々の生活に直接関わっているという点で、遥かに重要な問題であるにもかかわらず、これまで、「宗教法人と税金(免税)」の問題ほど、マスコミも含めた一般社会および宗教界の両方から、採り上げられてこなかったことが不思議なくらいである。

既に、一般メディアの報道で明らかなように、浄土真宗本願寺派(豊原大成総長)の本願寺岐阜別院(岡田義純輪番=2日付で辞任)を母体として設立された社会福祉法人「岐阜龍谷会」が、岐阜市内に建設した特別養護老人ホーム「黒野あそか苑」にからみ、国・県などから補助金を不正受給した事件で、名古屋地検特捜部は7月3日、補助金3億8千万円を過大に受け取った疑いで、同法人の前理事長で現在、本願寺富山別院輪番(2日付で辞任)の野田英隆容疑者や工事に関わった建設会社役員など4名が逮捕されたことは、同教団だけでなく、ひろく宗教関係者に大きなショックを与えた。

今回の補助金不正受給事件の当事者が厳しく処断され、監督義務のある同教団が社会的責任を負わなければならないことはいうまでもないが、一方で、わが国の福祉政策にも問題があることを忘れてはならない。宗教法人立の福祉施設や幼稚園が「政教分離」という国是によって公的助成をほとんど受けられないにもかかわらず、事業内容や役員の顔ぶれはほとんど変わらないのに、これを名目上、「社会福祉法人」や「学校法人」とするだけで、多額の補助金を受けられる現在のシステムこそ、今回の事件の温床になっているといえる。

これを機会に、本ホームページにおいても、「宗教法人と公的助成金」の問題について考えてゆきたい。ただし、冒頭で述べたように、本欄では、イデオロジカルな問題については、議論の対象としない。




「岐阜龍谷会」補助金不正受給事件について
月6日寺院関係者:匿名希望

岐阜別院の件ですが、正直言ってやっかいなことしてくれたなというところです。例のオウム事件程ではありませんが、同様な福祉事業を展開する宗教法人に対して何らかの影響はあると思います。
  

以前より政府の政策で、老人福祉には莫大な補助が出ます。今回の場合も90%もの補助が出ています。保育園のような施設では最低30%は法人負担になります。但しあくまでも社会福祉法人の場合です。福祉事業は福祉法人のみが行うものではありません。財団法人や宗教法人でも可能です。今回の岐阜別院では補助金を得るために別法人(福祉法人)を設立しましたが、以前からの保育園は宗教法人のままで運営されています。  

 しかし、岐阜県では政教分離のためか、宗教法人立の施設には補助金を一切出さない政策がとられており、建物をはじめとする施設面での負担は全て宗教法人がしなくてはなりません。唯一の優遇措置は固定資産税が非課税ぐらいの事です。政府に福祉という概念が無かった戦前より、いち早く福祉事業を行ったのは宗教法人です。当時の政策は、とにかく認可をするから福祉事業を寺の境内でやってくれ。というものでした。また当時は多少なりとも市や県からの補助が宗教法人にも出されていたようです。当時建てられた園舎は耐用年数を過ぎ、建て替えをしなくてはなりませんが、宗教法人立では数億円の建設費を全て自己負担しなくてはなりません。このために大半の保育施設は閉鎖されるか福祉法人に変更されました。岐阜県では3箇所のみが宗教法人立のままで存続しています。

 以上のような経緯をふまえ私なりに考えると、岐阜別院のように不正な補助金獲得を目論んでも不思議ではありません。逮捕された僧侶の方を直接には知りませんが、個人的な理由で不正受給を
目論んだものではないと考えています。  

ただ、老人福祉は不正を働かなくても儲かる事業であることは事実です。財界や医療法人が主体となり、別の福祉法人とさらに別の納品サプライ会社を設立します。一割の自己資金で豪華な建物を造り、そこで発生する給食や寝具・衣類の洗濯、清掃、ビルメンテナンス等を全て系列の別会社に発注します。このようにすることにより経理上も外注費ばかりになり、非常に楽になります。また毎月、県や市からは措置費という形で必要な経費が福祉法人に支払われますので、設立時の一割負担のみで後の負担はほとんど発生しません。
 

 福祉法人の構成員である理事は多くの場合無給ですが、それぞれが経営するサプライ会社には間違い無く公的資金が福祉法人を経由して流れ込むという構図になっています。今回逮捕された理事の会社もリネンサプライを主体として発展し、本人は商工会議所の副会頭にまでなったようです。  

 今回の事件は構成員の自覚の問題で片付けてしまうにはあまりにも後味の悪い気がします。根本的な問題、政治家による票集めや役人のおごり(私が許可をしてやった。私が作らしてやった。私が補助を出してやった)等に宗教家が簡単にのせられ、また一部の事業家の甘言に魅された結果ではないでしょうか。 

以上私の私見ですが、多少なりとも福祉事業に関係している者として大きな間違いは無いと思います。





10/7更新
岐阜龍谷会事件初公判被告起訴事実を認める


 浄土真宗本願寺派(豊原大成総長)の本願寺岐阜別院を設立母体とする社会福祉法人「岐阜龍谷会」(岡田義純理事長)が特別養護老人ホーム「黒野あそか苑」を建設するに当たって施工業者らと共謀して建築費を水増しして岐阜市等に申請、補助金を不正に受給したとして、「補助金等に係わる予算の執行の適正化に関する法律」違反及び詐欺の罪に問われた龍谷会及び同会前理事長の野田英隆(66)、同前理事の小野木三夫被告(72)らに対する初公判が、9月17日午後2時から名古屋地裁(安江勤裁判長)で行われた。 

 検察側は冒頭陳述で野田、小野木の両被告らが大手ゼネコン(株)ハザマの前名古屋支店長の山野内章被告(58)、岐阜別院の前門徒総代で設計会社(株)デザインシステム社長の近藤正樹被告(49)らと共謀、「黒野あそか苑」の建設に際し実際の工事費に約4億円を上乗せして約13億6千万円で契約を結んだように見せかけて岐阜市等に虚偽の申請書類を提出し、国や岐阜県、岐阜市の補助金約3億8千3百万円を不正に受給したと指摘した。龍谷会と4人の被告はいずれも罪状認否で大筋において起訴事実を認めており、公判後、龍谷会の岡田理事長はコメントを発表、「国、岐阜県及び岐阜市の損害をなんとしても弁償いたします」等とし、国や地方自治体、宗教界、社会福祉関係者らへの謝罪を表明した。 (中外日報)



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