● バンクーバーで第30回IARF世界大会開催される●


7月29日から8月3日の日程で、バンクーバー市(カナダ)のブリティッシュ・コロンビア大学において、IARF(国際自由宗教連盟=本部英国オックスフォード)の第30回世界大会が「地球共同体の創造=宗教の使命」のテーマで開催され、世界三十数カ国から約650名(日本からは約250名)が参加した。


1900年にボストンで創設されたIARFは、世界最古の国際的諸宗教協力団体であり、現在は国連経済社会理事会公認カテゴリー1のNGOとして世界的な評価を受けている。その第30回の世界大会がバンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学で開催された。

7月29日の晩に催された開会式には、これまでの世界大会のそれとは異なり、主に地元バンクーバーの宗教界の代表者による歓迎の辞が、英語・フランス語・日本語で述べられた。なかでも、カナダ先住民であるファースト・ネーション(旧称インディアン)のひとつツレイルワウトゥス族の長L・ジョージ氏の挨拶に注目が集まり、IARFの会長を務める椿大神社宮司山本行隆師が挨拶を行った。また、開会式の演出のひとつとして立正佼成会の雅楽・舞楽が演奏された。



立正佼成会による雅楽演奏


実質的な会議の中身は、翌30日の朝から始まった。大会期間中は、毎日、朝夕、世界各国の諸宗教が「祈り」を行うが、この日の朝は、古式ゆかしい神道の伝統に則った椿大神社の祈りから始まった。続いて、全体集会として、ニューヨークの地球教育協会のP・ミッシェ会長と英国国教会のバンクーバー主教M・インガム師が基調講演を行った。

3年に一度開催されるIARFの世界大会では、継続的なテーマ設定で、その分野の専門家からの論文・発表形式の研究部会が開催されるが、今回は以下の7つの分野において研究部会が設定された。すなわち、@グローバリゼーション:宗教者はどのように対応すべきか?、A信教の自由:IARFはどのように対応すべきか?、B開発:自助努力はどのように維持されるのか?、C霊性:われわれは真の人間性をいかに涵養しうるのか?、D宗教協力の戦略:IARFはどのような主教協力の取り組みを支持すべきか?、EIARF百周年:IARFの過去から未来を見出しうるか?、F環境を重視した生き方:われわれは地球を守るために何をなすべきか?、である。なかでも、JLC(IARF日本連絡協議会)が責任をもって企画した第4部会「霊性の涵養」は一番の盛況で、この部会の共同議長を務めた金光教泉尾教会の三宅善信師とジーン・リーブス博士による深い洞察力と軽妙な受け答えで、大いに盛り上がり、連日、百名を超す参加者が集った。

昼休みには、IARF名物のひとつでもあるサークル・グループが開催された。サークル・グループとは、特別の発表の機会を持たない一般の参加者にも、大会への参加意識を高めてもらうために、立正佼成会の「法座」をモデルに作られたもので、国籍・性別・年齢・宗教等の異なる十数名の人々が「輪」になって自分の体験や関心事を語り合うものであり、お互いがうち溶け合うのに十分な効果がある。連日、開催されたサークル・グループでは、言葉の問題等から初めはひっ込み思案がちな日本人も、日を経るにしたがってだんだんと積極的に発言するようになり、しまいには食事の時間も一緒に摂るようになるほど友人が作れるプログラムである。

午後からは、事前に登録さえすれば、自分(グループ)の意見を発表することができるワークショップが各所(合計三十数箇所)で開催された。これは、各加盟教団の紹介(参加者との質疑応答が中心)から、茶花道・書道・合気道・ヨガといった「芸事」、さらには、人権・環境・難民問題等の政治的な関心等がテーマとして取り上げられ、それぞれに関心のある人たちが自由に参加できるようになっている。また、夜には、文化プログラムと称して、各国伝統的な音楽や踊りが紹介された。

以上のような行事が、大会期間中、毎日繰り返えされるのである。重複されるものを省略して、日本からの加盟教団が主催したプログラムを中心に、日程を追って紹介すると、7月31日には、金光教泉尾教会主催の「朝の祈り」が行われた。IARF国際評議員でもある三宅龍雄師祭主の下、金光教のバンクーバーとロサンゼルスの教会長が祭員を勤め、英語によって祭典が進行され、祭典音楽を立正佼成会の雅楽部が勤めるという宗教協力の見本のようはユニークな「祈り」が行われ、各国からの参加者から賞賛された。



金光教泉尾教会の祈り


8月1日の朝には、一燈園主催の「祈り」が行われた。お昼には、「諸宗教の祈り」が行われた。国際色豊かなこの祈りは、主な加盟教団による短い祈祷(その国の言葉で行われる)と各国の宗教的な舞踊・音楽等を組み合わせたもので、日本からは、IARF国際評議員である酒井教雄立正佼成会理事長と金光教の三宅龍雄師が壇上で祈りを捧げた。また、ファースト・ネーションの代表による伝統的な自然への畏敬と感謝の祈りが参加者たちに深い感銘を与えた。

この日の夜の文化プログラムは、大会期間中の「華」ともいえるものであった。夕方7時半、ようやく陽が傾き始めた屋外の特設会場に、燈下が点され、立正佼成会による雅楽・舞楽が興せられた。この音楽に引き寄せられて多くの人が集まった頃を見計らって、「鏡割り」が行われ、参加者に樽酒が振る舞われた。この日は、山本会長の満77歳の誕生日でもあり、お祝いの言葉に続いて、はるばる椿アメリカ(カリフォルニア州)とワシントン州の神流神社から運んでこられた御輿と纏が入場し、IARF特製の法被を羽織った各国の若者たちによって担がれ、会場の一体感はいやがうえにも盛り上がった。


御神輿や纏も舞って、盛り上がった日本文化の夕べ

8月2日は、立正佼成会による「朝の祈り」で始まった。3日めを迎えた各研究部会での議論もだんだんとヒートアップしてきた。今大会での議論で印象的であったのは、とかく欧米(人の価値観)中心になりがちなこの種の国際会議において、日本をはじめとするアジア各国の比較的若い世代の参加者が積極的に発言を行ったこともあって、欧米人に彼らがグローバルスタンダード(世界標準)だと思っていることの多くは、それほどの普遍性がないことを気づかせることに大いに役立った。

大会最終日の3日は、法人としてのIARFの総会が行われた。議決権を有する代議員だけで構成される総会の主な役割は、規約の改正とIARFの意思決定機関である国際評議員や正副会長・財務担当役員を選出することである。定員21名の国際評議員(会長他の役員も含む)には、日本からは、山本行隆・三宅龍雄・酒井教雄の各師が再選され(任期1999〜2002年)、新たに、IALRW(国際リベラル宗教女性連盟)の会長としてIARF日本チャプターの横田佳代子氏が役務就任した。また、山本行隆師に代わる会長職には、オランダのE・ヘルワイネン氏が選出された。さらに、財務担当役員として酒井教雄師が選出された。また、2002年に開催予定の第31回世界大会の開催地として、ユニテリアン発祥の地ルーマニア西部のトランシルバニアに決定した。

この日の晩、閉会式が開催された。各宗教の代表による挨拶や祈りが中心の開会式や諸宗教の祈りと異なり、閉会式は、21世紀を担う青年を中心に構成された。数十名の青年プログラム参加者たちが、次の大会までに実践することを誓ったそれぞれ決意を発表し、青年らしく、音楽やダンスに満ちた演出となった。最後に、この大会を機会に退任する旧役員や事務総長への感謝の言葉で、6日間にわたる大会は閉幕した。
99/7/29〜8/3

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