石切探検隊・パート2

さて、いよいよ近鉄石切駅から里側へと足を進めてみた。まず、線路を越えたとたんに目に入ったのが商店街。狭い道の両側に商店が連なっている。そしてそこに溢れる人・人・人…。さっきまでの霊山的な雰囲気なんてどこへやら、とにかく混沌としている。雰囲気的には、テレビなどでよく見かける東南アジアのマーケットというかんじ。お土産やさん、洋服やさん(おばさん専門)、食堂、漢方薬店、八百屋さん、お漬物やさん、健康グッズ店…。

そして、何といっても、数々の占いやさん! 1km弱の商店街に気が付いただけでも、36店もの占いやさん! そのほとんどが、お土産やさんや洋服やさんなどとくっついていて、机と椅子がかろうじて置いてあり、ごく普通っぽいおばさんが座っているだけの『一坪占いショップ』になっている。すごいところはその占いのおばさんのすぐ後ろに「500円!」と札の付いたブラウスが並んでいる。



サイババ

その占いショップというのも、先程見てきた祠ばりに「何でもあり」の状態。「手相・家相・四柱推命・タロット・姓名判断。」こんな看板を出して、1坪ショップでひとりのおばさんが全部を担当するらしい。いったい、どういう占いなのか…。ある占いショップには七福神と並んでサイババの大きな写真が飾ってある。ついでに「占い屋台村」のようなものまで…



占い屋台村

14〜15坪の店舗をガラスで1坪ほどのブースに区切って、6・7件の占いショップが雑居している。そしてありとあらゆる占いの道具や占いを想起させる像などが並べられている…。

さらに足を進めると、石切劔箭(イシキリツルギヤ)神社の本社に行き着く。そこで2度びっくり! 平日にも関わらず、60〜70人の人がお百度参りを回っている。皆、100本の束ねたこよりを持ち、真剣な顔付きで何事がぶつぶつと唱えながら、ふたつの石の間をグルグルと…。平日でこの状態なのに、週末など人の多い日は渋滞して回れないことは確実。ここが、この混沌商店街の素なのか…。とにかく、おばさん・おばあちゃんの喜びそうなものはなんでも揃っているという感じ。そう、おばさんのディズニーランド。



お百度

ディズニーランドには「ここは子供の国。大人も子供も皆、子供の心になって楽しむこと」という独自のルールがある。石切界隈にも独自のルールがあるらしく、お参りこそが最優先される。その証拠に、「耳ナリの神様」(結構、立派)のお賽銭箱には、「主人死亡のため、お賽銭を入れないで下さい。石切警察署」という張り紙がしてあるにも関わらず、おばさんたちはガンガンお賽銭をほうり込んでいた。(彼女たち全員が耳鳴りがしているとも思えないんだけど)

とにかく、この紙面では語り尽くせない「何でもあり」ぶりが展開されている。そして、その無秩序の中からなんとも言えないパワーが湧き出ていて、この辺りに充満している。前回、「何か懐かしいような感覚」を覚えたと書いたけれど、この混沌から生まれる活力こそ、幼い頃から親しんできたものだと思う。夏祭の夜店の列。年末、人でもみくちゃにされながらお正月の食材を買い求める市場。いろんな出し物や出店、学生たちやお客さんが集まった学園祭。なにか人やものが一貫性なく集まると、それがひとつのまとまりになって不思議なパワーが生まれる。

 ただ単に私が幼い頃から「お祭やさん」だったから、このような感覚を覚えるのではなく、恐らく日本に生まれ育った大部分の人は同じように感じるのではないだろうか。これは、日本人の文化や行動を研究している方々にとって格好の研究材料となると思う。また、これだけの人を集める場所なのだから、マーケティングの見地から見てみるのもおもしろそう。石切さんはお参りと占いだけではなく、もっといろいろなものを私たちに提供してくれる。

以上、私が見た石切神社周辺の様子を、興奮にまかせて、一気に書かせて頂いた。山側と里側で大きく違うふたつの顔を持つ、この山について、もう少し言い残していることがあるので、次回、もう一度お付き合いください。

おまけ



兄弟




















宇根希英
                                      2000/4/03

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