国際神道セミナー『現代の聖地』

2019年10月29日

2019年10月29日、東京駅に隣接するサピアタワー内の関西大学東京センターにおいて、神道国際学会主催の第22回国際神道セミナー『現代の聖地:若者文化と神道』が開催され、日本から発信されるアニメがなぜ世界の若者を魅了するのか、また、聖地の有様やその変遷等について論議された。

独自のアニメ論を熱弁するレナト・ルスカ博士
独自のアニメ論を熱弁するレナト・ルスカ博士

最初に、神道国際学会のマイケル・パイ会長(マールブルク大学名誉教授)は「アニメは若者文化のキーワードであるが、その想像力の世界に神はいるのか」という興味深い問いかけをもって開会挨拶とした。続いて、岡山県立大学のレナト・リベラ・ルスカ特任講師が『日本のアニメにおける普遍的アニミズム』と題して、また、神道国際学会の三宅善信理事長が『自己目的化される聖地』と題して基調講演を行った。

ルスカ氏は、アニメ研究家として、現代日本の文脈の中で、アニメから連想される「聖地巡礼」をキーワードに、アニメに至る技術的なプロセスとメソドロジーについて、『鉄腕アトム』や『アルプスの少女ハイジ』や『らき☆すた』をはじめ多くのアニメ作品を実例として取り上げて、疑似体験の魅力について述べた。

アニメに登場する巫女キャラの変遷について述べる三宅善信師
アニメに登場する巫女キャラの変遷について述べる三宅善信師

三宅氏は、メッカや伊勢神宮などの古今東西の宗教的「聖地」に加えて、スポーツの競技場やアニメの舞台などもファンにとっては「聖地」であり、それらの地へ実際に足を運ぶ行為が宗教的な「巡礼」と軌を一にするいわば「自己目的化」であり、現代における「宗教の私事化」に繋がるものであると述べた。

基調講演を受けて、弁護士で神職でもある塩谷崇之神道国際学会常任理事がモデレータとなり、2名の基調講演者に芳村正徳神習教教主とカリフォルニア大学のファビオ・ランベッリ教授がパネリストに加わり、芳村氏は「聖地化をどう教化に活かすか」またランベッリ氏は「擬人化という手法を用いるアニメの問題点」という観点から基調講演者の発言に切り込んだ。

各自のアニメ論で大いに盛り上がったパネル討議
各自のアニメ論で大いに盛り上がったパネル討議

最後に、神道国際学会副会長でアニメ通でもある奥野卓司山階鳥類研究所所長が、1年前に京都で開催された神道国際学会主催の第18回国際シンポジウム『アニメのカミ:若者文化と神道』を受けて開催された今回の国際セミナーで可視化されたさまざまな問題について触れて、閉会の挨拶とした。

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