世界は日本に何を期待しているのか?
01年09月15日

レルネット主幹 三宅善信

▼湾岸戦争の二の舞か?

 9月11日に、ニューヨークのWTC(世界貿易センター)ビルとワシントンDCのペンタゴン(国防総省)を攻撃したと言われるイスラム原理主義勢力へのアメリカによる報復攻撃が予想どおりの展開を見せて準備されつつある。前作『そして、バベルの塔は崩壊した)』で予告した通りである。

 私は9月12日のコリン・パウエル米国務長官の記者会見を車中のラジオで聞いていて愕然とした。というか、「またか」と思った。湾岸戦争の英雄パウエル国務長官のスピーチの趣旨は、「あらゆるテロリズムに対する世界規模の連合を構築することが米国の優先課題である」ということであり、各国に呼びかけてテロ包囲網を作り上げる方針を明らかにした。"血の同盟"と言われる英国(アメリカの国語は"英"語である)のブレア首相が真っ先に、アメリカに対して「軍事力の派遣も含めて全面的に強力を約束する」と言ったことは、当然予想されたことである。

  その延長上にあるNATO(北大西洋条約機構)諸国が米国に協力するのも、そもそもソ連の脅威に対して結成されたNATOは「加盟国の一国への攻撃は、加盟国全体への攻撃と見なす」ということで、一枚岩の体制(集団安保という保険)を見せつけることによって、ソ連の軍事的脅威に対する抑止力となってきたことからすれば、米国の経済(ニューヨーク)と政治(ワシントンDC)の心臓部に対する今回のテロ攻撃を、アメリカがこれを戦争行為と決め付け、したがって、そのことに対してNATO各国がアメリカに協力する――多くの場合は、自国の軍事基地の使用提供や、"多国籍軍"の体裁をとるための兵力の派遣等も含めて――ということは、当然のことである。


▼パールハーバーの二の舞か?

 今回、パウエル国務長官の会見で興味深かったのは、「フランスのシラク大統領も協力を表明してくれた。ドイツのシュレーダー首相からも全面支援の電話がかかってきた」といった感じで、具体的に十数カ国の国名を挙げたことだ。「EU(欧州連合)やNATOの首脳とも、電話で密接に連絡を取りあっている」というところまでは、まことに常識的だった。私は「そろそろ、ここら辺で日本の小泉首相からも、全面支援の」と、名前が出るかと思っていた。ところが、「ロシアのプーチン大統領からも支援を頂いた」さらに、とっくの昔に"死んだ(役目を終えた)条約"といわれる「ANZUS条約の条項に従って、派兵をするというオーストラリアからの心強い申し入れもあった」というふうに言った。まだ日本の名前が出てこない。その上に、本来は、ブッシュ政権の仮想敵国であるはずの共産主義中国政府からも「江沢民主席から電話いただいた」や、(今回、ターゲット視されているアフガニスタンと)同じイスラム圏である「エジプトからも協力の要請があった」と、まるで"世界連合"体制であるかのごとく強調した。しかし、最後まで"日本"という名前は出なかった。世界最大の資金拠出をしながら、「Too little, too late.」と言われた湾岸戦争の時の二の舞の予感がした。

 パウエル国務長官は、ホワイトハウスで開催された国家安全保障会議の内容について、「1) テロ犯人を司法の場に連れ出す。2) 犯人の処罰。3) 反テロ連合の構築。の3点を目指す計画を決めた」と、明らかにし、「米国だけでなく、文明全体への攻撃だ」と世界中が被害者であるとの認識を示し、世界中の国々をアメリカの闘う戦争へ引きずり込もうとした。しかし、情けないことに、パウエル長官が十数カ国挙げた中に、ついにJAPANのJの字も出てこなかったのである。事件の第一報後、日本もすぐに安全保障会議を開き、そして12時間後というタイミングを失した感もあったが、一応、記者会見を開き、小泉首相が、米国に対して「全面的に協力するからなんでも言ってくれ」と言ったのに、そのことに対して、アメリカは全く日本を無視したのである。田中眞紀子外務大臣が就任早々に、挨拶に来たアーミテージ国務副長官を袖にしたツケがこんなところに回ってきたとしたら、これこそ大変なことである。

 もちろん、後でこの不祥事 (米国に無視されたことの理由を聞かれたら) を国会で質問されたら、政府の答弁は、「正式なルートを通じてキチンと伝達した」と答えるであろう。しかし、現実には、世界中の人々が注目するパウエル国務長官の記者会見で、日本の名前は一度も出なかったのである。日本政府そのものが機能していないのか、外務省に相手に伝達する能力が無いのか…。恐らく60年前の真珠湾攻撃の時もそうだったのであろう。精一杯伝達(米英両国に対する宣戦布告)しているつもりが、相手には全然通じていない。これは即ち、伝達していないのと同じであり、「(パールハーバーは)卑怯な奇襲攻撃だ」と言われてしまった。

 この衛星放送やインターネット全盛の時代に、いくら落ち目とはいえ世界第2位の経済大国である日本国の首相が記者会見をし、また、外務省が米国務省に通達したであろうにもかかわらず、相手(米国首脳部)に通じていないのは最低である。サッカー選手を見習ったらどうか。ちょっと足をひっかけられても、審判にアピールするために、大げさにひっくり返って見せるじゃないか…。そして、審判が相手選手にペナルティを取ってくれたら、何ごともなかったかのように、元気に走ってゆくではないか。国際社会では、自己主張しなければ相手は気づかないし、よしんば気づいていたとしても、知らなかったふりをされるだけである。マキャベリズムの国際社会には、「諸国民の正義と公正(『日本国憲法』前文)」なんて、微塵もないのである。


▼敵の敵は味方

 「日本は、アメリカにとって最も重要な同盟国である」と言われながら、肝心な時には、アメリカから無視されているのである。アメリカはむしろ、エジプトやサウジといったイスラム穏健派諸国の支持のほうを求めているのである。湾岸戦争の時には、アメリカの西側同盟国が多国籍軍を構成したが、今回、アメリカは、イスラム穏健派諸国の支持どころか、これまで"敵"と目されてきた、タリバンと友好関係にあるパキスタンのムシャラフ政権にすら交渉をし、そして、「パキスタンの領空を飛行して、アフガニスタンを攻撃することの許可を得る」ということにまで至った。

 もちろん、これにはいろんな裏取引があったであろう。パキスタンはアメリカに対して、核兵器開発に伴う経済封鎖の解除はもとより、核兵器の保持そのものを認めさせたに違いない。「もし、うち(パキスタン)までタリバンが政権を握ることになったら、テロリストが核兵器を保有することになるんだぞ」と言って…。それをアメリカは丸飲みしたはずである。この半世紀、アメリカの基本的な外交戦略は「敵の敵は味方」だった。これで、数多くの失敗(イラン・イラク戦争の時に、イラクに肩入れして、それがフセイン政権の強化に繋がったことなど)してきたにもかかわらず…。

 この手の「裏取引」は今後も山ほど出てくるだろう。例えば、パキスタンの"敵"のインドは、今回のアメリカがアフガニスタンへ地上部隊を派遣する場合には、安全な通路として、「同じイスラム教徒で、いつ反米感情の強い住民が裏切って、米軍に刃を向けるかもしれないパキスタン領なんかと通らずに、インドを自由に通ってくれ」と申し入れてくるだろう。これも、親切ごかしに見せかけて、実は、米軍をインド領を通過させることによって、長年、パキスタンと領有権争いを行っているカシミール地方を、「インド領である」と国際的に承認させるための手だてである。その他、アフガニスタンに国境を接しているイランもタジキスタン(バックにはロシアが付いている)も、すべてこの戦争を利用して自国の権益の拡大をはかることであろう。国際政治では、「正直者=バカ者」であり、「狡賢い=賢明」ということなのだから…。


▼アメリカは日本のヒモである

 皆さん思い出して欲しい。9月11日の同時多発テロのわずか3日前、サンフランシスコにおいて、コリン・パウエル国務長官と田中眞紀子外務大臣が出席して、日米講和条約並びに日米安全保障条約署名50周年記念式典が華々しく開催されたばかりではないか。その時に、アメリカの太平洋からの表玄関ゴールデンゲートブリッジの横にある元陸軍基地プレシディオで(日米安保条約)記念式典が開かれ、また、市内のオペラハウスで(日米講和条約)記念式典が行われた時に、パウエル国務長官は「日米安保体制はアジア太平洋地域の要石で、世界の平和と安定のために極めて重要だ」と緊密な同盟関係の必要性を訴えたはずではなかったのか? あれは単なるリップサービスだったのか? そして、お得意の英語でスピーチした田中外相は、「次の世代にこの同盟関係を引継ぐのがわれわれの責務だ」と同盟関係の維持を表明し、中谷元防衛庁長官も英語で乾杯の挨拶をしたのではなかったか? いったい、この僅か3日前に行われた日米安保体制を自画自讃したこの式典は何であったのか? 僅か3日後に、アメリカがある種の危機的状況に陥った時に、全く日本が無視されたということを日本人はどう受け止めればいいのであろうか?



日米講和条約50周年記念式典

 私は日米関係を考えるときにいつも思うことがある。上品な譬えではないのであまり使いたくはないが、極めて解りやすいので使うことにする。アメリカと日本の関係というのは、アメリカがヒモの男で、日本はその男に一生懸命貢いでるバカな女といった構図ではないだろうか。日子は"米男命"ということで、いつも金魚の糞のように付いていく。否、どこへでも付いてまわる金魚の糞どころか、いつ来るか判らない男のために、毎日、暖かい夕食を用意して、狭いアパートでじっと待ち、自分は爪に火を燈す生活をしながら、身体を売って一生懸命稼いだ金を全て米男に貢ぎ、懐具合が寂しくなった時にだけやって来る米男に陵辱されては、帰りに土産まで持たして帰らし、「私には貴方だけしかないわ。貴方が命だわ」と言いながらも、次のお渡りを待っている。

 しかも、米男には他に同じような女が5人も10人もいるのだ。しかし、日子は「米男様には女は私しかいない。たまにしか来ないのは仕事が忙しいからだ」と勝手に思って、より一層、米男の関心を引こうと次々と貢ぎものを出す。そして、最後は捨てられるのである。これすべて、日本国民が汗水垂らして稼いだ血税である。そのことが余計に、その男に足蹴にされているということが理解できていないのである。このような一方的な関係を「世界で最も重要なパートナー(同盟関係)」と誰が言えるであろう。何も私は「アメリカと同盟関係を結んでいる状態が悪い」と言っているのではない。同盟関係を結ぶのなら、対等な夫婦もしくは兄弟の関係で結ぶべきである。現在の「内縁の妻」のような同盟なら、本当の同盟になっていないではないか。こんな同盟は即刻、解消すべきであると思う。


▼貴重な名悪役サダム・フセイン

 また、世界の現状も情けない。冷戦終結後、軍事も経済もアメリカの一人勝になってしまった世界で、かつて、「反米のカリスマ的指導者」であったキューバのカストロ議長もただの好々爺(こうこうや)になってしまい、リビアのカダフィ大佐も自宅をピンポイント爆撃されてからはすっかりスポイルされてしまって、今回の事件が起きた時も、「アメリカ国民に哀悼の意を表する」とか言っている。彼らは長年アメリカに痛めつけられてきたのだから、アメリカが殺られたのなら、本来なら心の中では「ざまあ見ろ!」と思っているはずである。しかし、そのことを口に出して言う勇気がない。カリスマの魔法が切れてしまったとしか言いようがない。ウサマ・ビン・ラディン(Osama bin Laden)という新しい「反米カリスマ」の出現に、危機感を抱いたのはただ一人、イラクのサダム・フセイン大統領だけであった。



イスラエル軍に殺されたパレスチナの子供の葬儀

 今回フセインは、プロレスの悪役のような絵に描いたような敵役を演じてくれた。フセイン大統領曰く、「世界で数々の悪事を働いてきたアメリカに、そしてイラクの国民を爆撃で苦しめてきたアメリカに、天の報いが降ったのは当然のことなのだ」と…。程度の差はあれ、このように思った人は、かなりいたはずである。今回のニュースの第一報が届いた時のパレスチナ人を見よ。「アメリカ本土が攻撃された」と聞いて、多くのパレスチナ人が狂喜乱舞したではないか。武器を持つことを禁止されている一般のパレスチナ住民が、投石による抗議行動(インティファーダ)をしたことに対して、イスラエル治安当局は機関銃を向け、また、昨秋以来、パレスチナ人の自爆テロに対しては、パレスチナの政治的指導者の自宅をめがけてミサイルで攻撃するというような過剰防衛をイスラエル軍はしでかしている。また、その事実に対してイスラエルの後見役であるはずのブッシュ政権は目を瞑ってきた。

 この約1年間、毎日のようにパレスチナ人がイスラエルに殺されている。彼らに残された抗議手段は、自らのいのちを捧げる自爆テロ以外にはなかったのである。そのことに対して、西側の諸国は言うまでもなく、本来同朋であるはずのアラブの国々まで、ほっかむりをして知らん振りをしてしまっている。パレスチナの人々のやり場のない虚無感に対して、誰が応えたのか? 今回、例えアメリカが、アフガニスタンへ軍事侵攻して、ウサマ・ビン・ラディン氏を殺した、あるいは捕まえたとしても、アメリカが世界に対して行っている行為の構造を変えない限り、第2、第3のウサマ・ビン・ラディンが現れることは目に見えている。



UNRWA(国連パレスチナ難民救援計画の所長からヨルダン川西岸地区の実状について
説明を受ける著者)1994年撮影

 もちろん私は、結果として無関係な第三者(私は、よくメディアが使う「罪もない一般市民」という表現は、決して用いない。欧米人の一般的な宗教であるキリスト教の教義の従うと、人間はすべて「罪深い存在」であるはずである。したがって、「罪もない一般市民」という表現は、神学的には成り立ち得ないのである)に犠牲を強いることになる卑怯なテロ行為を肯定するつもりも、称賛するつもりも毛頭ない。しかし、今回こういったことに至った根本原因を考えずに、単に、このテロ事件だけを切り取って、「アメリカは、この行為に対する当然の報復をした」というだけでは、分析がお粗末である。


▼米国はバーミヤンの仏教遺跡破壊を咎めたか

 本テロ事件が起こるちょうど半年前、アフガニスタンを実効支配するイスラム教原理主義勢力のタリバンは、歴史的にも貴重な世界遺産であるバーミヤンの仏教石窟遺跡を予告爆破したではないか。あの時にどれだけの国が、どれだけ本気でタリバンに抗議をしたというのか? もし、あの爆破が仏教遺跡ではなく、パルテノン神殿だったらどうだったのか? エジプトのピラミッドだったらどうだったのか? アメリカはどのような抗議をしたのだろうか? あるいは、ベツレヘムの(キリスト)生誕教会を爆破してたらどうなったのか? バチカンを爆破してたらどうなったのか?

 しかし、キリスト教を奉じるアメリカにとっては、偶像崇拝の輩であるアジアの仏教遺跡の一つや二つが消えてなくなったって、屁でもなかったのであろう。タリバンにとっては、バーミヤンの仏教遺跡は、イスラムの教えに反する存在(偶像)だったから、これを取り除いたまでのことであった。しかし、あの時、タリバンに対して「責任をとれ」と厳しく主張した人がどれだけいたか。少なくとも私は「自己中心的な論理しか持てないタリバンの指導者を国際機関が圧力をかけて厳罰に処すべきだ」と国連事務総長宛の手紙も書いた。と同時に、そのような構造を招いたあり方に対しても、問題を提起したはずである。



タリバンに爆破されたバーミヤンの石窟大仏

 タリバンから見れば、バーミヤンの仏教遺跡がイスラムの教えに反する偶像であるのと同様、マンハッタンの世界貿易センタービルもワシントンのペンタゴンも皆、ウンマ(イスラム共同体世界)の実現を抑圧するするシンボリックな存在だったのである。今回の事件が、世界経済(株価)に与える影響について、記者から質問された塩川正十郎財務大臣の答えがしゃれていた。「そんなこと判りません。神さんに聞いて下さい」そう、彼らはまさに「イン・シャ・アラー(神の意志あらば)」の世界に生きているのである。


▼ウサマ・ビン・ラディン式錬金術

 最後に、私にとってはあまり関心のないことであるが、多くの日本人(政治家やメディアも)にとって最も関心のある課題のひとつである「本事件の経済に与える影響」について、少し意見を述べたい。何を隠そう、誰かさんも「資産家の息子で、神学校(Divinity School)出身、おまけに反米主義者」という共通点があるから…。

 まず、私がウサマ・ビン・ラディン氏だったら、以下の手段を使って更なる闘争資金作りを行うであろう。すなわち、株式投資(商品先物も)にとって、最も重要なファクターは、ある会社の株が、明日、上がるか下がるかが予め判れば、お金はいくらでも入手できるのである。これが判らない(ことになっている)から、皆苦労するのである。これを称して、「神の見えざる御手(Invisible hand of God)によって導かれている」と言い、先のことは「誰も知らない(Nobody knows)=神のみぞ知る(God knows)」と言う。まさに、経済学というのは、神懸かっているのである。

 そこで、テロ攻撃の対象にする会社(今回なら、ユナイテッド航空やアメリカン航空それにWTCや各種金融機関)の株式を、直前に先物で大量に「空売り」するのである。そして、事件を引き起こして、それによって大損害を受けた会社の株式が大暴落したところで、それを「買い戻」せば、それだけで巨万の富が得られる。問題は、最初の軍資金だが、資産家のラディン氏だったら、数億ドルの資金には事欠かないだろう。しかも、これら、経営不安になった会社に対して、臨時措置として合衆国政府が公的資金援助を行うであろうから、また、株価が上昇し、またまたラディン氏が大儲けすることになる。こうして、"極悪人" ラディン氏は、敵国のマーケットと国庫から、まんまと大金をせしめ、その資金でまたアメリカを攻撃するという悪魔の連鎖反応が拡大再生産されてゆくのである。

 しかし、案外このことがラディン氏の墓穴に繋がるかもしれないのである。なぜなら、「神のみぞ知る」はずの、株価の乱高下を事前に正確に予測できるということは、すなわち、インサイダーであり、本件に関するインサイダー=事件の関係者である確立が非常に高いからである。今回の株の暴落で大儲けした人々(会社)を丁寧に洗ってゆけば、必ず、かなり良い線まで行けると思う。当然、捜査当局もその線で、犯人特定の手がかりを追っているであろう。因みに、この時期にこんな事件が起こるとは、つゆとも思わなかった私は、先月末頃から、「そろそろ大底なので、買いのタイミングだ」と思ってかなり買い越していたが、今回の世界同時暴落で大損をした。


▼画期的なデフレ不況克服策

 暗い話ばかりだと、気分が滅入ってしまうので、最後に、今回の事件をバネにして、日本のデフレ不況を克服するひとつのモデルを考察してみたいと思う。最初に述べたように、日本の軍事的貢献には限度があるし、もとより、米国や西側同盟諸国からも、そのような貢献が期待されていないことは明白である。また、仮に自民党の一部の勢力が期待しているように、国民の支持が得やすい本件を利用して、なし崩し的に自衛隊の海外派兵や集団安保の合法化を狙うという試みがなされたら、非友好的「周辺諸国」の皆さんは、文句を言いまくるであろう。それこそ、靖国神社の時の比ではないだろう。

 そこで、いい方法がある。「今回の"人類文明を守る正義の戦争"の戦費をすべて日本が持ちます」と世界に向けて宣言するのである。これで、アメリカはじめ西側同盟職は大喜びするであろう。ただし、戦費は米ドルではなく日本円で支払うのである。思い切って、ドーンと100兆円くらい一気に出すのである。100兆円と言っても、国民からは一切増税しないで、日銀券(1万円札)をドンドン印刷するだけである。せっかく、日本が援助しても、これまでのように米ドルで支払ったのでは、当該者に「これは日本からの援助である」ということが目に見えないが、大型輸送機でジャンジャンと戦地や補給基地に空輸するのである。100兆円というと約1万トンの重さになるから、日の丸をボディ一杯に塗りたてた(これを称して「Show the flag=国名が目に見える」援助と言う)大型輸送機で200往復くらいするのである。

 そうすると、いったい何が起こるか? たいていの地域では、米ドルなら自国通貨と同様もしくはそれ以上に買い物ができるが、日本円(キャッシュ)は、観光地以外の海外(特に戦地)ではほとんど使えないので、大量の日本円を手にした人々が一斉に、米ドルに両替をするであろう。すなわち、急激な円安ドル高になるのである。これでまず、輸出産業に弾みがつく。大量のキャッシュを手にした米国人は物を買いまくり、特需景気となう。すると、大量の日本円が日本国内に還流してくるので、国内ではマネーサプライの過剰現象が起き、大インフレとなる。これで、銀行の不良債権も急速に縮小し、デフレ不況も解消し、国と地方を併せて666兆円にもなる膨大な借金の返済も相当軽減されるはずである。アメリカを助けたと見せて、実は、日本の不況を克服するウルトラCの作戦である。


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