日韓宗教者協議会 30周年記念総会 開催



開会の挨拶を行う三宅龍雄日韓宗教者協議会会長

 10月13日、金光教泉尾教会(大阪市)において、日韓宗教者協議会創立30周年記念総会が開催され、韓国宗教界の代表34名を含む約百名の宗教者が、『21世紀における宗教生態主義時代』をテーマに話し合いを行い、『大阪宣言』や『中東和平アピール』を採択した。なお、総会に先立ち、昨年死去した日韓宗教者協議会の創設者である三宅歳雄師の追慕式が行なわれた。また、翌14日には、韓国代表団一行が四天王寺・今宮戎神社・東大寺・春日大社などを訪問し、交流を深め合った。


*創設者の三宅歳雄師を追慕

午前10時、参加者一同は泉尾教会広前に参集した。戦後の日韓国交正常化からまだ年月も浅く、36年間にわたる日本の植民地支配によって、非常に反日感情の強い韓国宗教界との交流の端緒を築き、その動きが、日韓関係だけでなく、韓国宗教界内の融和につながり、KCRP(韓国宗教者平和会議)の創設の母体ともなった、韓国宗教人協議会を生み出すことになった「日韓宗教界の恩人」とも言え、昨年逝去した故三宅歳雄師(日韓宗教協議会初代会長・先代金光教泉尾教会長)の追悼式を行うためである。



故三宅歳雄師への追慕の辞を奉読する李昌圭KCRP会長

 この日の総会に参加した日韓宗教両国の宗教指導者全員が、広前霊前で玉串を奉奠し、参加者を代表して、儒教の総本山である成均館館長の李昌圭KCRP会長が追慕の言葉を奉じた。


*30周年総会の開会

 午前10時半、会場を神徳館国際会議場に移し、大阪国際宗教同志会(以下、国宗と略す)理事の上田恵亮法華宗太平寺住職の司会で開会。最初に、山田隆章融通念佛宗大念佛寺教学部長による開会の祈祷(日本語と韓国語で)が行われた。続いて、日韓宗教協議会会長の三宅龍雄金光教泉尾教会長(国宗理事長)による歓迎の辞と、韓国宗教人協議会の李載錫会長による答礼の辞が行われた。さらに、両国の協議会の事務局長(日本側内海雅継氏・韓国側安炳日氏)から今回の総会開催の経緯報告や日程報告が行われ、本日の30周年「総会」における日本側の議長として国宗常任理事の松井石根天理教明城大教会会長が、また、韓国側議長としてKCRP会長の李昌圭成均館館長が選出され、開会に伴う儀式は終了した。




開会の挨拶を行う李載錫韓国宗教人協議会会長

 続いて、今総会の主題発表が行われた。テーマは「21世紀における宗教生態主義時代(宗教の共生・共栄)」という日本では、いまだに馴染みの薄いテーマが採択された。本、テーマについて、日本側は、国宗顧問の瀧藤尊教四天王寺第105世管長が、自然界の多様性と統一性の原理を仏教の「一大乗」の概念を用いて説明し、また、韓国側は曹渓宗佛國寺住持の李性陀大宗師が、東(仏教)西(キリスト教)の思想史の研究から、その行き詰まりを打破するために生態学の理念を導入するに至った過程を説明し、新世紀の幕開けに相応しい、地球規模でのダイナミズムを有する示唆に富んだ基調講演となった。また、両講演者には、質疑応答が行われたが、全体的には、日本側の参加者が韓国側のグローバルな広がりを持った関心に付いて行くのがやっとの印象であった。




松井石根・李昌圭両師の共同議長で進められた全体会議


*インターバルも貴重な時間

午後1時過ぎからの昼食は、会堂ホールに場所を移して行われたが、ブッフェ(バイキング)形式のランチが好評で、日韓両国の参加者が三々五々集まって、非公式な場での意見交換に花が咲いていた。」また、昼食休憩中、本総会の「大阪宣言」案の起草委員会も開かれた。



和気藹々とした昼食の様子

総会は、午後2時過ぎに再会され、第1分科会(テーマは「宗教者の自己実現」)の共同議長として、日韓宗教協議会副会長の西村淳晨本門佛立宗清風寺住職と大しゅう(ニンベンに宗という字)教の李栄載総典教が指名された。また、第2分科会(テーマは「宗教者の倫理」)の共同議長として、国宗理事の片岡友次住吉大社権宮司と兪炳澤成均館副館長が指名された。



第2分科会の様子

 第1分科会の発題者としては、国宗理事の村山廣甫曹洞宗東光院住職と大韓イェス教長連合総会金光明会長とが、また、第2分科会の発題者としては、花園大学名誉教授の葛葉睦山臨済宗桂香寺住職と金恒済鮮文大学校教授とが、それぞれの宗教的背景を元に発表を行い、それをきっかけに忌憚のない意見交換が行われた。また、コーヒーブレイクの席でも、それぞれに自分の関心のある人を見つけては、意見の交換を行っていた。


*『大阪宣言』や『中東和平アピール』を採択

 午後4時半から、全体討議に移り、両分科会からの報告を受けて、全体で主題について、さらに理解を深め合った。特に、環境問題で、京都国際宗教同志会理事長の西田多戈止一燈園当番の「人間が『地球を守る』というのは僭越である。『地球に感謝する』というべきである」という提言が、注目を集めた。さらに、本総会の決定事項である『大阪宣言』と『決議』案が宣言起草委員会から報告され、一部の語句を修正して採択された(別紙)。また、国宗理事の三宅善信金光教春日丘教会長からの緊急提案で、WCRPの管理委員会議長を務めるヨルダン王国のハッサン殿下から、WCRP国際名誉会長を務める三宅龍雄師に対して、昨晩、支援依頼のあった「パレスチナ紛争」への宗教者の積極的なコミットメントを受けた日韓宗教者協議会・韓日宗教人協議会としての決議として採択することとなり、長年の宗教的・民族的確執を乗り越えて、相互信頼関係を築くことができた日韓関係を例に、パレスチナ(主にイスラム教徒)とイスラエル(主にユダヤ教徒)の間に信頼を築くことができるとする別紙の『中東和平アピール』が採択された。

 最後に、韓国側を代表して洪印谷太古宗総務院長と、日本側を代表して国宗会長の津江孝夫今宮戎神社名誉宮司が閉会の挨拶を行い、李教夫大韓イェス長主賢教会が閉会の祈祷を行って、無事、日韓宗教者協議会創立30周年記念総会は閉会した。




懇親会で挨拶を行う三宅龍雄大阪国際宗教同志会理事長

この後、会場を南海サウスタワーホテルに会場を移し、日韓宗教者協議会の日本側での受け入れ母体である大阪国際宗教同志会主催の懇親会が行われた。最初に、国宗理事長の三宅龍雄が挨拶を、李中九太古宗総務部長が祈祷を行い、国宗常任理事の松井石根天理教明城大教会会長が歓迎の挨拶を行い、李載錫韓国宗教人協議会会長が答礼の挨拶を行った。続いて、国宗理事で元法務大臣の左藤恵大谷学園理事長の発声で、乾杯が行われ、夜の更けるまで、懇親会が盛り上がり、最後には、日韓両国の宗教者が輪になって、韓国民謡の『アリラン』を歌って閉会した。なお、来年は、ソウルにおいて韓日宗教人協議会創立30周年記念総会が開催される予定である。




開宴の祈りを行う李中九太古宗総務部長


また、翌14日の午前中には、韓国宗教人協議会一行34名が、大阪国際宗教同志会にゆかりのある和宗総本山四天王寺と今宮戎神社を公式に参拝し、それぞれの代表者と懇談を行った。さらに、午後には、華厳宗大本山東大寺と春日大社を表敬訪問し、日韓両国の千数百年にわたる民族・文化交流に思いを馳せた。


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